歯医者さんの一服
歯医者さんの一服日記

2007年02月01日(木) 容疑者の過去写真掲載について

長年歯医者稼業をやっていると、普段から人様の口に関心がいってしまうことはこれまで何度も書いてきました。口というのは顔のパーツの一部ですので、顔のことを抜きにして考えることはできないもの。口の中を治療する際、顔全体のことも考えながら治療することが求められます。
ところが、普段の歯医者の仕事では口の中に気が入ってしまいがちで、顔全体のことを考える余裕が無くなって来ます。このようなことにならないよう、僕は普段から意識的に顔にも関心を向けるようにしています。
写真を見る時も同様で、口の周囲を中心にどのような顔をしているのか、僕は常に関心を持って見ています。

昨今、思いもかけぬ悲惨な事件、凄惨な事件が後を絶ちません。年明け早々から東京の歯科医師一家の尊属殺人事件があったと思いきや、夫を殺し、死体を切断し、遺棄した事件などなど枚挙にいとまがありません。人間というもの、精神的に追い込まれると人を殺してしまうことを何とも思わなくなるものなのでしょうか?自制心が無くなり、歯止めが利かなくなってしまった残虐な行為には言葉を失ってしまいます。

この手の事件で、マスコミで必ず報じられるのが容疑者の写真です。報道ということを考えると容疑者の写真を取り上げることは仕方のないことかもしれません。けれども、僕がどうしても納得できない写真があります。それは、容疑者の過去の写真です。容疑者の学生時代の写真や卒業写真、友人同士の旅行での写真や勤務先での写真など、現在の容疑者の写真ではなく、かつての写真を掲載するマスコミが目立つように思います。これら写真を見る度に僕は思うのです。

“容疑者の過去に罪はないだろう!“と。

容疑者が事件を起す背景には、容疑者自身がかつて育ってきた環境が影響していることは大いに考えられると思います。家庭での躾、親や兄弟姉妹との接し方、近所との付き合い、学校での授業態度、友人との関係、クラブ活動、アルバイト、勤務先での仕事ぶりなどなど、容疑者を取り巻く環境のいくつかが容疑者を犯罪に導いた可能性は否定できないことでしょう。
けれども、再犯でない限り、現在の状況ではない過去の時点において、容疑者と言われる人は何も罪は犯していないはず。同一人物であっても、罪を犯した現在の容疑者と罪を犯していない過去は違うはずなのです。

僕は思うのです。現在、容疑者として逮捕された時点での写真を公開するならまだしも、かつての何も罪を犯していない、容疑者となる前の人の写真を掲載するのは如何なものかと。マスコミで報道される写真の中には、容疑者の幼少時代の写真を平気で取り上げている例さえあります。幼少時代に罪を犯したわけでもないのに、今の時点で容疑者であるという理由で過去の容疑者の写真を掲載するということは、それこそ人権を無視しているとしか思えないのです。
マスコミ関係者の話では、何か事件が起こり、容疑者が逮捕されると、容疑者に関係する人に接触し、その容疑者に関係する写真の提供を求めるそうですが、マスコミ関係者も、また、写真を提供する側もこのような行為は慎むべきではないでしょうか。

マスコミで容疑者のことを取り上げるならば、罪を犯した現在の写真に近いものだけを掲載すべきで、それ以外の過去のものは掲載すべきではないと考える、歯医者そうさんです。


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