歯医者さんの一服
歯医者さんの一服日記

2009年04月17日(金) 開けてびっくり親知らず

これまで何本もの歯を抜歯してきた僕ですが、未だに抜歯は難しいと感じます。根っこが顎の骨に癒着していたためになかなか抜歯できなかったケースがあったかと思えば、むし歯が歯の中に広がっていたために歯に力をかける度に崩れ、結果的に抜歯に非常に時間がかかったケースもありました。また、歯がグラグラし簡単に抜歯できても止血に時間がかかったケースもありました。

抜歯の中でも特に難しいのが親知らずでしょう。口の中でも一番奥に位置する親知らず。第三大臼歯や智歯とも呼ばれている歯ですが、真っ直ぐ生えている親知らずを見ることはあまりありません。むしろ、斜めに生えたり、骨の中に埋まった状態の親知らずの方が多いように思います。

親知らずの抜歯が難しい理由はいくつかあります。一つは親知らずの位置でしょう。歯の中でも一番奥に位置するため、他の歯よりも治療用器具を入れることに気を遣わざるをえません。患者さんには大きな口を開け続けてもらわないといけません。上顎の親知らずの場合はそうでもないのですが、下の親知らずの抜歯の場合、長時間口を開けてもらう場合がしばしばあります。

また、親知らずは解剖学的に複雑な形をすることが多い歯です。特に、根っこに関しては他の奥歯、大臼歯に比べ非常にユニークな形をすることが多いのです。真っ直ぐな根っこは少なく、根っこが曲がっていたり、枝分かれしていたりすることが多いのです。

歯は年齢を重ねるほど根っこが顎の骨と癒着する確率が高くなります。もともと、歯は顎の骨と直接つながっているわけではありません。歯根膜と呼ばれる薄い線維でつながっているのです。歯根膜は歯にかかる力を緩衝する役割があり、顎に過大な力がかからないような役割があるのです。車でいうショックアブソーバーみたいな役割といえばいいでしょうか。この歯根膜、加齢とともに段々変性し、中には無くなってしまうような場合あります。そうすると歯は顎の骨と直接接することになり、次第に顎の骨と一体化、すなわち、顎の骨と癒着する結果となるのです。
こうなると抜歯は難しくなります。顎の骨の一部を削らないと抜歯できないのです。
親知らずの場合、年齢を重ねてから抜歯が難しい最大の理由がここにあります。歯科口腔外科の専門医の中には機能していない親知らずは、なるべく若いうちに抜歯すべきとの意見を持っている方もいますが、賛否両論あるものの一理はあると思います。

とにかく、親知らずは他の歯に比べ非常にユニークな歯であることは間違いありません。特に抜歯をする場合、歯医者はそのユニークさに翻弄させられます。開けてびっくり親知らずというところでしょうね。


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