2009年05月14日(木) |
乳歯が残っているおばさん |
先日、ある中年女性患者さんが来院しました。奥歯にむし歯ができたので治して欲しいということで来院されたのです。患者さんの話を一通り聞いた僕は患者さんの口の中を診ていたのですが、むし歯のある歯を診て“あれっ?”と思いました。念のためにレントゲン写真を撮影し確認をしてみましたが、僕の“あれっ”はある確信へと変化しました。
「むし歯の歯ですが、これは乳歯ですね。」
患者さんは驚かれていました。乳歯は全て抜け落ち、永久歯と生え変わっているとばかり思っていたからです。確かに無理はありません。誰でも幼稚園から小学生の頃あたりに乳歯が永久歯に生え変わるわけですから。この頃から既に40年以上経過している現在、乳歯が残っていると指摘されれば、誰でも驚くことでしょう。
この乳歯が生え変わらずに長期間にわたり残っていることは時々見かけます。この理由の多くが後続永久歯が生まれつき無い場合です。どうしてこのようなことが起こるのか、理由は定かではありません。遺伝の悪戯としかいいようがありません。いつまで経過しても乳歯が永久歯と代わらない場合、歯医者でレントゲン写真を撮影すれば、早期に後続永久歯が無いことがわかります。子供を持っている方でいつまで経っても永久歯が生えてこない場合、まずは歯医者で診てもらうことが寛容です。
後続永久歯が無い乳歯の場合、乳歯は無理をして抜歯する必要はありません。なぜなら、抜歯をしてしまうと、歯並びに隙間が生じます。当然のことながら歯並びやかみ合わせが乱れる可能性が生じます。歯科治療では、後続永久歯が無い乳歯は、可能な限り残しておくことが基本です。 もし、このような乳歯が取れたり、抜歯せざるをえない場合はどうなるか?この場合は、通常の永久歯が一本抜けた場合と同じ扱いになります。すなわち、入れ歯にするか、隣同士の歯を削るブリッジにするか、自費治療であればインプラント治療という選択肢があるでしょう。
今回のケースの場合、乳歯にはむし歯があったのですが、幸いむし歯は浅く、むし歯を取り除いた後、詰め物で蓋をすることで治療を完了することができました。患者さんも安堵され
「代わりのない乳歯ですから、これからはこれまで以上に大切にしていきます」という言葉を残し、診療室を後にされました。
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