はぐれ雲日記
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2006年05月16日(火) 符丁

若いころ、築地の魚河岸で仕事をしていたが、その頃、商売ではほとんど符丁(ふちょう)を使った。
符丁は、商品に付ける値段の記号。 仲間内で通じる合い言葉のようなもの。
うちの店は海老問屋だったので符丁は「明けの海若恵比寿」 あけのうみわかえびすだった。
この記号は店によってそれぞれぜんぶちがった。
つまり、あ=1 け=2 の=3・・・・という意味で、売り子さんが帳場にむかって
「花寿司さん巻きワカね!」 「魚竹さんタイガー、ケーミー。」 「ダイエーさんアーエーだよ」
このとき帳場のわたしは花寿司さんの領収書に 巻き海老670円×100本 67000円と書く。

同じ時刻にお得意さんと上得意が来た場合当然値段は違ってくる
でも、お客さん同志ねだんがちがってはいけないね。(これタテマエ)
わからないように符丁を威勢良く使う。
魚竹さんのタイガー海老は1ケース2500円  5ケースお買い上げ〆て12500円也。
ダイエーさん、まったく同じタイガー海老が1700円。1200ケースお買い上げ〆て204万円なり。 バーゲン用だ。

これは、差別でなく区別だ。
粋なエチケットだと専務が再三再四、ミニタコ、でなく、ミミタコで説明してくれた。
7人の売り子さんがほとんど同時に値段を怒鳴ってくる。聞き分けて瞬時に領収書を切り
茶屋札を書く。現金が小切手が、文字どうり乱れ飛ぶ。

おかげでめっぽう安産でなく暗算には強くなった。
専務が12×12=144って暗記しとけ。1ダースは良く使う単位だからね。
2500円は一万の四分の一だから言い値を四分の一で割るって
覚えておいたほうがいいの。とか具体的にいろいろ教えてくれた。 だから今でも暗算はとくい。
数えるお金はないけど・・・。

そのころ、社長は相撲道楽。○○部屋のタニマチすじ。
 専務は三味線の名手。 番頭さんは清元(長唄のようなもの?)のセミプロだった。ちょいと江戸草紙の世界だった。

若い衆はキビキビいでたちもキリリと立ち働き、スッキリとした男前ばかりだった。
火事と喧嘩は江戸の花、粋でいなせで目で殺す。
そんな男が上物だと今でも信じて疑わない。・・・・時もたまにある。

♪浦和から4時半の始発で築地に通った。
1ヶ月でリタイヤするかと、自分でも思っていたけど、水があっていたのか結婚するまでの3年間続いた。
帰りは銀ブラをするか、気が向くと勝どき橋や白髭橋をわざわざ渡って帰った。

くたびれるとよく、幼い頃遊んだ隅田川沿いの”言問い団子”を食べに立ち寄った。
春のうららの・・・。桜には目もくれず。 aikoそのころ56キロと500グラム・・・。春や春。今は昔。

おあとがよろしいようで・・・。


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