カゼノトオリミチ
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ええとやっぱり
どこかへいく途中だったような気が時々する
たとえば曇りの早朝お勝手で
お湯の沸くのを待っている
トタン屋根の向こう
どんより流れる梅雨空は
遠い国の長く厳しい真冬の空のようで
雪に閉じ込められ
ぶあついガラス窓を指でなぞった憂鬱な気分まで
鼻先によみがえり
ベランダで揺れる葉をながめるこの身体は
なんだか 誰かからの借り物のような
マンションの給水塔の向こうへ飛んでゆけば
うす曇りの水色が
私を5歳の春の祝日の午後へと連れてゆく
そんな時もしかしたら
この着ぐるみの中から抜け出したくて
記憶のひだの奥に隠してた記憶をちらり
思い出してしまうのかも
ええと旅してたんだっけ
タンポポの綿毛が 風にのる時を知り
握ってた手をそっと離す その瞬間を
自分のどこかが思い出してしまいそうで
natu

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