カゼノトオリミチ
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2007年07月20日(金) 風の記憶




ええとやっぱり

どこかへいく途中だったような気が時々する



たとえば曇りの早朝お勝手で

お湯の沸くのを待っている

トタン屋根の向こう

どんより流れる梅雨空は

遠い国の長く厳しい真冬の空のようで

雪に閉じ込められ

ぶあついガラス窓を指でなぞった憂鬱な気分まで

鼻先によみがえり



ベランダで揺れる葉をながめるこの身体は

なんだか 誰かからの借り物のような

マンションの給水塔の向こうへ飛んでゆけば

うす曇りの水色が

私を5歳の春の祝日の午後へと連れてゆく



そんな時もしかしたら

この着ぐるみの中から抜け出したくて

記憶のひだの奥に隠してた記憶をちらり

思い出してしまうのかも



ええと旅してたんだっけ



タンポポの綿毛が 風にのる時を知り

握ってた手をそっと離す その瞬間を

自分のどこかが思い出してしまいそうで




natu