☆空想代理日記☆
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昨日の不逞者、なぜかむしゃくしゃしていた。五線譜をぐちゃぐちゃに丸めて元に戻そうとしたり、ピアノの鍵盤を力いっぱい叩いて「どこが『ド』なんだ!」と叫んでしまいたかった。
このようにイライラしている時は、視るからに不倫カップルだとわかる人たちを捜しだして首のうしろにチョップをくらわしたり、バッティングセンターで金棒を振り回すにかぎる。
そうしてバッティングセンターのほうを選択したのだった。
反対側の壁面に設置されてある、白球を吐きだす殺人マシーンに向かって、不逞者はぶんぶん金棒を振り回したのである。
イライラを解消するにはもってこいだと思う。そして不逞者のイライラも絶好調であった。
「サボテンのステーキって、何だそりゃ!」 「ラムネの入れ物の上のほうって、『ゴン太くん』に視えるんだよ!」 「刺身? 切り身の間違いじゃねーのか!?」
などと叫びながら白球を打ち砕いた。
もちろん周りにいた人たちも、カウンターに座っていた店主も、口をぽかんと開けたまま不逞者のことを視ていた。
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