☆空想代理日記☆
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この世の中にうどんの国というものがあるならば、たぶん不逞者はうどん王子の血が流れているのかもしれない。
単なる近所のうどん屋さんへ行っただけのことを、大袈裟にするとこんな感じである。
そのうどん屋は、うどん屋にしておくのがもったいないくらい広い店だった。おそらく不逞者の心くらいの広さだった。どおりで床が黒かったのかとひとり納得したのだった。
高校時代に何か格闘技でもしていたんですか? と勘違いできるほどの大きな店は、ぜんぜんお客さんがいなかった。
もしかしたら不逞者がうどん屋の席についているのは幻覚なのかと頭を左右に振ってみた。
しばらくすると注文したものが眼の前におかれた。うどんにはコシがあって、背中や厚い胸板はなかった。
幻覚のくせになかなか美味しかった。本当の不逞者は、ヨダレでふにゃふにゃになったベビースターを喰べている年頃であるはずだ。
30歳でうどん屋にひとりで座って、スポーツ新聞を読みながらちゅるちゅる麺をすすっているわけがないはずだった。
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