2007年09月02日(日) |
中国が特別国債を6千億元(約9兆円)発行 |
中国が特別国債を6千億元(約9兆円)発行
中国財政部は8月29日付で特別国債を6千億元(約9兆円)発行したと発表した。国債の期間は10年で年利4.3%。国債で調達した人民元は、外貨準備として持っている米ドルに換金されて、政府が9月に設立を予定している資金運用会社の設立資本金に使われる予定。 (8月30日付け 日本経済新聞)。
戦略ポイント:国家のお金を投資で運用するのはどうなのでしょう?
同じ記事によると、中国の外貨準備高は07年6月末時点で1兆3,300億ドルあるそうで、もちろん世界最大の外貨保有国です。輸出力が高い中国は輸出業者が受け取った外貨が莫大に増えていて、外貨を人民元に両替する圧力がとても巨大です。ほおっておけば外貨が売られて元が買われるので元高になります。政府は元高を阻止するため外貨の買いオペレーションを行いますので政府にどんどん外貨がたまるわけです。
今まではこの外貨準備で米国の財務省証券(米国債)を買うことが多かったのですが、中国政府は米国債に偏った運用ではリスクもあると判断したようで、思い切って国家のお金を投資で運用する国有投資会社の設立を決めました。
日本には外貨準備を活用した国有投資会社はありません。有名なのはシンガポール政府が大株主となっている国有投資会社「テマセク」です。2006年3月末の運用残高は1,290億シンガポールドル(約10兆円弱)もあるそうで、これはシンガポールのGDPの60%に相当する金額だそうです。
テマセクはシンガポール航空やDBS(銀行)などシンガポールの主要な企業へ投資するだけでなく、アジア各国の企業に投資しています。中国ですと建設銀行や中国銀行にも投資しています。おそらく中国政府もテマセクに追いつけ追い越せで投資先を広げてくると思われます。
テマセクのように上手に投資して運用できると理想的ですが、最近はサブプライムローンの破綻問題が端緒となって証券市場に信用収縮が発生しまだ収まっていません。これからしばらくの間はそうとう慎重な投資姿勢が必要となる中で、中国の国有投資会社設立のニュースは投資業界に明るい希望となっているようです。
また、先日もプライベートエクイティ(未上場株の投資)のブラックストーン社に中国政府が30億ドル(約3500億円)の株式取得による出資行いました。しかし、上場を予定していたブラックストーン社はサブプライムローン問題に足をすくわれて上場の見通しさえ立たなくなってきました。株式上場によるキャピタルゲインも狙っていた中国政府の思惑はすでに大きくはずれた格好になっています。
国家投資会社が運用する原資は人民が額に汗して集めた外貨です。投資は常にうまくいくとは限りません。人民の努力の結晶を安易に投資という形で市場に委ねていいのかどうか、議論が残るような気がします。
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