またあそこか! - 2008年01月03日(木) 一雨ごとに寒さが増してくる。ここら辺は冬になると“遠州の空っ風”といわれる風が吹き荒れる。 こうなると、海釣り愛好者たちが待っていましたとばかりに夜釣りでの太刀魚釣りで、防波堤はにぎわいをみせる。この防波堤は立入禁止区域なのに、依然としてテトラポットからの転落事故があとをたたない。 家庭ではすでに一家団らんの一時をおくっている時間に、事故は発生した。 『救急救助指令、現場○○町○○地先、水難事故』 指令書を確認、出動。 「またあそこか!」 隊員たちはそれぞれが、口にする。そのぐらい事故が多発する区域だ。 以前にも要救助者救出完了後、隊員がテトラポットから足を滑らせ転落したばかりだ。 今日は特に夜間という悪条件が重なる。 テトラポットからの転落は、運が悪ければ海の中に落ち、そのまま行方がわからなくなってしまう。 出動途上、先着隊に自己確保をとり活動するよう指示する。 また、自己隊には暫定的な救出方法を指示する。 現場に近づくにつれ、防波堤には当然先着隊等の赤色灯及びサイレンで事故があった旨を察知しているはずなのに、何食わぬ顔で魚釣りをしている人、人、人・・・ 目の前で事故が発生しているのに平然と魚釣り・・・・ 「これじゃあ、減らないはずだ!」 現着後、隊員には救助工作車の照明と資機材の準備を指示するとともに現場に走る。 「足元注意!」 現場の状況を聴取する。 要救助者は転落時、海水に落ち流されそうになったため、近くにいた者が咄嗟にタモを差し出しつかまらせた。 救急隊長は、テトラポット一段下に降りその要救助者に救命胴衣を着装させをロープで確保している。 この時点で救助工作車からの照明が点灯され、周囲を明るく照らし始めた。 この照明は、ハロゲンランプを8灯つけ、100メートル先で新聞が読めるほどの照射能力がある。が、油断するな! テトラポットより下が照射できない。 高低差がわからない。 暗闇ほど不安になるものはない。 テトラポットは波が打ち寄せ、不気味な音を醸し出す。 要救助者にとっては、これほどの恐怖はないだろう。 ましてや海水で濡れ震えているではないか。 あせるな! 自分に言い聞かせる。 幸いなことに、要救助者には骨折等の負傷箇所はない。 負傷程度によっては、別な救出方法を考察しなければならない。 「ワイヤー梯子の設定!」 「確保しながら、ゆっくり上げ!」 要救助者は、隊員の指示に従い一歩づつ確実に上がってきた。 そして、テトラポットからテトラポットへ隊員の確保を受け、無事防波堤にたどり着く。 「救出完了!撤収!」 「気を抜くな!」 事故は始めより終わりの方に発生している。 ちょっとした気のゆるみだ。 「撤収完了!」 咄嗟の判断で自分のタモを差し出した人にお礼を述べ、終始何食わぬ顔で釣りをしている者を横目で見、帰路に着く。 ...
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