退去! - 2008年01月05日(土) 『火災指令、現場○○町○○、建物火災第1出動』 寝静まった街中を赤色灯が散光し辺り一面を綺羅びやかに映し出す。 そして、それに反するかのように、けたたましいサイレンが街中に響き渡る。 通信指令室から付加情報がはいる。 『要救助者にあっては不明・・・』 逃げ遅れた者の有無の確認を隊員に指示する一方、空気呼吸器の着装に入る。 機関員には、『交差点内、最徐行!左右確認』を指示する。 昔、上司から言われたことを言っている自分が、今ここにいる。 『あせるな!現場に急ぐより、現場に着いてから急げ!』と・・・・ 私たち消防職員は、確かに全てにおいて迅速さを要求される。 しかし、あせるあまりに事故を起こしたのでは、本来の目的が達成できない。現場に着いて始めて活動ができるのである。 ここでも、機関員の冷静な判断が要求される。 私たちを現場に連れて行くことが機関員としての役目だ! そのためには、運転技術、地理の精通、道路通行禁止箇所の把握等、機関員の役割は大きい。ましてや、現場に着いてから、同じ隊員として活動するんだから・・・・。 現場到着。 現場は木造、瓦葺き平屋建ての借家で、表側からは既に火炎が噴出しており、他の借家への延焼が心配になる。 隊員に検索用ロープの携行と関係者からの情報収集を、機関員には照明の点灯を指示する。 「この家の方はいますか?」 「母親と息子の二人暮らしです。息子の車はないようだけど・・・」 「母親は入院しているみたいだけど・・・」 「もう、退院しているのでは・・・・」 いろいろな情報が交錯する。 建物火災では、要救助者情報の把握に苦慮するが、このような時は要救助者があるものとして活動することが基本である。 即座に裏側に回る。 一室は雨戸で閉ざされていたため撤去する。 続いて、ガラス戸だ。 ここで進入を試みようとしたした時、異様な熱気と煙を確認する。 「退去!」 直ぐさま退去を命じる。 その時、窓から『ボワン!』と、火炎が噴出した。 『バックドラフトだ。』 建物火災では、破壊による解放時には噴出している煙の色、勢いから判断して、バックドラフト現象に配意する必要があることは承知している。 また、これと同様な爆燃現象で『フラッシュオーバー』という現象も忘れてはならない。 進入路を閉ざされてしまった。 要救助者がないことを祈りながら消防隊の防御に協力し、他への延焼を防止し鎮圧した。 鎮圧の安堵感もつかの間、『母親の焼死体発見!』の情報が入る。 『ごめんね!』 と心の中でつぶやきながら、その母親を毛布で覆う。 悲惨な場面を幾度とも経験しても、やはりつらいものがある。 それは、家族とだぶらせるからだろうか・・・・・。 しかし、我々救助隊はその扉の向こうがいかなる状況であろうと、持てる知識や技術を駆使してそこへ行かなくてはならない! − 合掌 − ...
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