前回彼と会った時から心の中にわだかまりがあって、
彼とのお付き合いをこれからも続けていくかどうか迷っていました。
彼とは定期的に1週間に1、2回会うようになった代わりに、
メールの数は極端に少なくなりました。
この変化は会わない時間はお互いに干渉しないという彼のスタンスを
はっきりと示すものでした。
それはつまり、会えない時間にお互い誰か別の人と会っていたとしても
立ち入る問題ではないということを意味していました。
この頃、私は彼に一度だけこんな風に話したことがありました。
「私は恋愛感情の無い相手と抱き合うことは出来ない。
以前の友達の関係に戻りたい。
あなたも私に対して恋愛感情はないでしょう?」
私は言葉を選びつつも率直に自分の気持ちを伝えました。
「恋愛感情とかどうとか、自分の気持ちなんて決められない。
俺はお互いルールを守って楽しく付き合えればそれでいいと思ってる。
君のようにこうしなきゃいけないと決めてみたところで、
世の中どうにもならないことの方が沢山あるでしょう。
それなら先のことは考えずに、
今楽しい時間を共有出来ればそれでいいと思うから。
でも、それはあくまで俺の考え方だから。
女性でも俺みたいな考え方の人はいると思うけれど、
もし君がそういう付き合い方は出来ないと言うのなら、
それは俺がどうこう言う問題じゃない。」
こう彼に言われた時に、私はただうなずくしかありませんでした。
彼は彼、私は私なのです。
ただ嘘を吐いたりせずに、正直に言ってくれたことに感謝しました。
その選択をこの時点ではまだ彼に伝えてはいなかったけれど。
彼とこのような会話があってから数日後、
彼はゴルフコンペの打ち上げパーティを出席せずに、
私のために時間を空けてくれました。
彼は古い洋館をレストランにした素敵な中華料理のお店を
予約してくれました。
そこで彼と私はゆっくり食事しながら、沢山の話をしました。
ただ私が友達に戻ろうと告げた時の会話の内容だけには触れずに。
食事をしている間にあの人からメールが着信しました。
短いメールだったので、私はその場ですぐに返信しました。
「誰から?」
「あの人からです。」
「まだメールしてるの?」
「はい。」
「彼もまだメールしてくるんだね。」
「はい。」
「それはおかしい。(笑)」
「嫌いになりたいんです。」
「それは言ってることがおかしいでしょ。」
「そうですか?早く嫌いになりたいと思ってます。」
「好きじゃない人を嫌いになりたいなんて言わないでしょう。
それは今も好きだって言ってることになるよ。」
彼は納得して、それ以上は何も聞いてきませんでした。
レストランを出た後、私は彼に抱かれました。
お互い愛している相手ではないのに、
求め合う気持ちがこんなにも強いことが不思議でした。
あの人との愛の方がずっとずっと重かったのに、
それを体で求めることが恐くなっていた私。
彼との繋がりの方が軽くて細くて、
すぐにでも切れてしまいそうなものなのに、
何も恐れずに求めることが出来るのでした。
そして何より、私は男の人に強く求められることを望んでいたのです。
本当ならもう一度あの人に求めて欲しかったのだけれど。
彼に抱かれながら、涙が零れました。
涙の意味は欲望と同じ位曖昧でした。
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