彼が怒ったのはあの時一度だけだったけれど、
あれから私は気持ちが吹っ切れて、
以前より前向きに彼と付き合えるようになりました。
あの人と違うのは彼はとても正直だということ。
あの人は口では優しいことを言いながら
行動が言葉を裏切っていたことが何度もありました。
彼は口も悪いし、私をおちょくることもしょっちゅうだけれど、
私と一緒にいる時、
彼のどの動作1つとっても包容力があり温かいのでした。
そして彼はあの人と全く違っていたから
次第に二人を比べることはなくなり、
私の心の中にはあの人ではなく彼が住むようになりました。
彼とは映画の趣味も似通っていたので、
抱き合った後に一緒に映画を観ることもよくありました。
彼から借りたままになっていたキューバのジャズの映画を
ホテルの大きなスクリーンで彼の腕の中で観ました。
彼は仕事でキューバに数年住んでいたことがあって、
映画を観ながらその当時の話を色々聞かせてくれました。
彼と激しく抱き合った後に、
彼に優しく触れたり、触れられたりしながら、
ゆったりとお喋りをするのはSexそのものよりも素敵なことでした。
彼とのお付き合いに本気になるのはやめようと
ずっと自分に言い聞かせていたけれど、
そんなことはどうでもいいように思えてきました。
彼と私の想いは今のところ同じ。
一緒に食事したり、映画を観たり、お喋りする時間がとても楽しいし、
会えばいつでもお互いが抱き合いたいと望む関係。
これ以上何を望むことがあるでしょう。
あの人の気持ちが掴めなくて常にビクビクしていた半年前の私。
あの人の言葉からしか愛情を推し量ることが出来なかったあの頃。
今の彼は私を欲張りにも欲求不満にもさせない人。
あの時期に彼に出会えたことは私にとって幸運でした。
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