こうして私はあなたを好きになった
綴りたいのは残された言葉、なつかしい匂い、
揺れる気持ち、忘れられない感触

2008年12月29日(月) 一足早い誕生日


 その日は朝から雪が降っていました。

 お昼休みに会う約束をしていたので用意をしていると、

 彼から電話がありました。


  「雪がひどくなってきたから、近くまで車で行くよ。

   外歩くの寒いだろ。

   そっちに着いたら電話するから、それから出ておいで。」



 彼の車に乗り込むと、彼はすぐに言いました。


  「さて、デパート行こうか?」

 
  「えっ?」


  「プレゼント買うから。」


  「私が選ぶんですか?」


  「俺は女の人の物なんて分からないし…。^^」


 誕生日のお祝いをしてくれるという話は聞いていたけれど、

 私がプレゼントを選ぶということを想定していなかったので、

 すぐには何も思いつきませんでした。



 年末のお昼時ということで、

 デパートの駐車場はどこも混んでいました。

 お互い仕事のお昼休みを抜けて出て来ているので、

 あまりゆっくりしている時間はありません。

 信号が赤に変わった時、彼が思いついたように私に聞きました。


 「何が欲しい?」


 「お財布かな。」


 「今持ってる財布、ちょっと見せて。」


 彼は私の黒のバーバリーのお財布を手に取りました。

 
 「これ、いいじゃない。」


 「うん、これも気に入ってるんですけど、

  バッグとお揃いのブランドのものが欲しいと思ってたから。」



 彼は何も言わずに車を走らせました。

 そして、ファッションビルの近くに車を止めると、


 「ちょっと、ここで待ってて。

  携帯に電話したらすぐに出るんだよ。」


 と言い残して車を出て行きました。



 しばらくすると、携帯電話に彼から着信がありました。


 「色は何がいい?」


 笑いながら彼が聞きました。

 近くで店員さんらしき人の声が聞こえます。


 「今どこにいるんですか?」


 彼は既に私が欲しいと告げたブランドのお店にいました。

 彼はお店の場所を知っていて、すぐ近くに車を止めたのでした。


 「今から色を言うから、その中から選んで。」


 彼は5色のカラーセレクションを私に言いました。


 「やっぱり見てみないと選べないです。^^;;」


 「わがままなお嬢さんだなぁ。^^

  じゃあ、代わるからちょっと待ってて。」


 彼はそう言うと、私の返事を待たずにすぐに電話を切りました。

 間もなくして、彼は車に戻って来ました。


 「そこのビルの入り口を入るとすぐだから、行って選んでおいで。

  支払いは済ませてあるから。」


 いつものことだけれど、彼の手際の良さに驚きました。



 綺麗にラッピングされたプレゼントを持って車に戻りました。


 「ありがとうございます。」


 運転席の彼を見て言いました。

 彼が黙っていたので、言葉を続けました。


 「こんなに高価なもの頂いてしまって、ごめんなさい。」




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 車のウインドウから外を見ると、

 降りしきっていた雪はもう止んでいました。

 クリスマス色に飾られた華やかな街を見ながら、

 彼とこの季節を過ごせることがとても幸せだと思いました。


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理沙子

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