その日は朝から雪が降っていました。
お昼休みに会う約束をしていたので用意をしていると、
彼から電話がありました。
「雪がひどくなってきたから、近くまで車で行くよ。
外歩くの寒いだろ。
そっちに着いたら電話するから、それから出ておいで。」
彼の車に乗り込むと、彼はすぐに言いました。
「さて、デパート行こうか?」
「えっ?」
「プレゼント買うから。」
「私が選ぶんですか?」
「俺は女の人の物なんて分からないし…。^^」
誕生日のお祝いをしてくれるという話は聞いていたけれど、
私がプレゼントを選ぶということを想定していなかったので、
すぐには何も思いつきませんでした。
年末のお昼時ということで、
デパートの駐車場はどこも混んでいました。
お互い仕事のお昼休みを抜けて出て来ているので、
あまりゆっくりしている時間はありません。
信号が赤に変わった時、彼が思いついたように私に聞きました。
「何が欲しい?」
「お財布かな。」
「今持ってる財布、ちょっと見せて。」
彼は私の黒のバーバリーのお財布を手に取りました。
「これ、いいじゃない。」
「うん、これも気に入ってるんですけど、
バッグとお揃いのブランドのものが欲しいと思ってたから。」
彼は何も言わずに車を走らせました。
そして、ファッションビルの近くに車を止めると、
「ちょっと、ここで待ってて。
携帯に電話したらすぐに出るんだよ。」
と言い残して車を出て行きました。
しばらくすると、携帯電話に彼から着信がありました。
「色は何がいい?」
笑いながら彼が聞きました。
近くで店員さんらしき人の声が聞こえます。
「今どこにいるんですか?」
彼は既に私が欲しいと告げたブランドのお店にいました。
彼はお店の場所を知っていて、すぐ近くに車を止めたのでした。
「今から色を言うから、その中から選んで。」
彼は5色のカラーセレクションを私に言いました。
「やっぱり見てみないと選べないです。^^;;」
「わがままなお嬢さんだなぁ。^^
じゃあ、代わるからちょっと待ってて。」
彼はそう言うと、私の返事を待たずにすぐに電話を切りました。
間もなくして、彼は車に戻って来ました。
「そこのビルの入り口を入るとすぐだから、行って選んでおいで。
支払いは済ませてあるから。」
いつものことだけれど、彼の手際の良さに驚きました。
綺麗にラッピングされたプレゼントを持って車に戻りました。
「ありがとうございます。」
運転席の彼を見て言いました。
彼が黙っていたので、言葉を続けました。
「こんなに高価なもの頂いてしまって、ごめんなさい。」
車のウインドウから外を見ると、
降りしきっていた雪はもう止んでいました。
クリスマス色に飾られた華やかな街を見ながら、
彼とこの季節を過ごせることがとても幸せだと思いました。
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