彼に会えば、たちまち小さな不安など解消されてしまう不思議。
イタリアンレストランのカウンターに並んで座り、
赤ワインを飲みながら彼とお喋り。
「理沙子のいい所は何でも良く食べる所だって、
Tさんの褒め言葉っていつもそればっかり。」
「もっと褒めて欲しい?^^」
「だって、それしか褒める所無いみたいなんだもの。^^」
「他にもあるよ。」
「ほんと?^^」
「全部だよ。」
思わず嬉しくなる私。
「でなきゃ、こうして一緒にいないだろう?」
改めてそう言われてドキドキしてしまいました。
「初めの頃、理沙子も俺のこと好きにならないようにしてるって
言ってただろうが。」
「うん、好きにならないように頑張ってたの。
でもある時点からもう諦めました。(笑)」
「ある時って?」
「ん…結構最近です。」
「美味しいもんをたらふく食べた時だろう?(笑)」
「あはは…。
えっとね…。この前初めてお泊りした時。」
「あのホテルが気に入ったのか?^^」
「あの時、凄く楽しかったから。」
「で、俺を好きになったの?^^」
こういう時の彼は自信満々に見えて、何故か悔しくなるのです。
「うん、だからもうお泊りはしません。」
彼は何も言わず私を見て笑っています。
「でも、やっぱりしたい!^^」
「どっちなんだよ。(笑)」
それから、今から言っておくけど…と前置きして、
来月以降に入っているゴルフの予定を教えてくれました。
彼はわざわざ2人の女性の友達からの
ゴルフの誘いのメールを見せてくれました。
2人とも既に何度も彼の話題に出てきている女性です。
「前にも言ったと思うけど、
シーズンが来たら俺はゴルフが第一だから。
やましいことは一切無し。(笑)」
「ゴルフが恋人なのね。^^」
「そう。^^」
「メールまで見せてくれたのは私が焼餅を焼くと思ったから?」
「うん、焼餅焼くだろう?^^」
「焼餅は隠してるつもりだったんだけどなぁ…。
焼餅焼きって嫌われるから。
どうして私が焼餅焼いてるってわかるんですか?^^」
「時々寂しそうな顔をするから。」
「私ってそんな顔してるんですね…。
でも、怒るよりは寂しがる方がいいでしょ?^^」
「それは、そうだな。^^」
恐らく彼は今までの経験から女心というものを熟知しているのだと
思いました。
だからあの人にとってはかなり厄介だった私の焼餅も
難なく封じることが出来るのでしょう。
彼は私が彼にぞっこんだと思い込んでいるうぬぼれ屋さんです。
女心を自由に操作できるのも経営者の資質によるものでしょうか。
以前彼が言っていた言葉を思い出しました。
「自分には人に対して冷たい部分があって、それが嫌いだ。」と。
彼が見せてくれるありったけの温かさの裏にある冷たさに
私が気付かなくなってしまったのは、
私の瞳に恋というフィルターが
かかってしまったからなのかも知れません。
だとしたら、それは喜ぶべきこと?
それとも悲しむべきことなのでしょうか?
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