こうして私はあなたを好きになった
綴りたいのは残された言葉、なつかしい匂い、
揺れる気持ち、忘れられない感触

2009年03月16日(月) 喧嘩未遂


 彼と繋がっている時、

 「好き?」と聞いたら、「大好き。」と答えてくれた彼。

 終わってから「好き?」と聞いたら、




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 「付き合い始めの頃、

  割り切った大人の付き合いをしたいって言ってたでしょ。」


 彼が不機嫌になるのを知りつつ、続ける私。


 「あの時は強がってたんだ。」


 「Tさんは私と別れたとしても、割り切れますか?」


 「それは、分からない。」


 「欲しい言葉を引き出したとしても

  駄目になってしまうこともあるのだから、

  求めても仕方ないね…。」


 納得と落胆半々の気持ちで私は静かに目を閉じました。




 目が覚めたのは12時過ぎ。

 彼は隣で眠っていました。

 彼を起こしてしまうと家まで車で送ってもらうことになるから、

 そのまま静かにバスルームへ行きました。

 シャワーを浴びて部屋に戻ると、彼が目を覚まして言いました。


 「もう帰るか?」


 「私一人でタクシーで帰るから大丈夫です。」


 「そんなの可笑しいだろ。

  俺もすぐ着替えるから。」


 「いいですよ。寝ていて下さい。

  割り切った関係なんだから一人で平気。」


 「喧嘩売ってんのか?」


 静かな怒りを含んだ彼の冷静な声を聞いて、

 私は返す言葉を失いました。




 それから彼はあっという間に着替えて、

 先に車を出しておくから支度が済んだらおいでと言って

 部屋を出て行きました。

 しばらくして携帯電話に彼から着信。


 「テーブルの上の栗羊羹、持って来いよ。

  あと、DVD一旦返しておくよ。同じのまた借りてやるから。」


 栗羊羹は私が食べてみたいと言っていた有名なお店のものを

 彼がデパートで買って来てくれたのでした。

 DVDは彼が一週間レンタルして、先日二人で観たものでした。

 素敵なフランス映画だったから私がもう一度観たいと言ったのでした。

 ホテルに向かう車の中の会話では

 私が持ち帰って次のデートで返すと言っていたのに、

 彼は次に会う約束が面倒になったのかなと思いました。


 「返却日までにまた会えるならその日まで観ておくけど。

  木曜日までに返せばいいのでしょう?」


 彼は次のデートの約束をしてくれました。

 二人で行きたいと話していた美術展があるのです。



 帰り際、車の中で小さなキスを二つしました。

 またすぐに会えるのに少し切ない味がしました。


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理沙子

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