ベッドで私が目を覚ました時、彼はまだ寝息をたてて眠っていました。
しばらく愛しい人の寝顔を見つめた後、私はそっとベッドを離れました。
よっぽど疲れていたのでしょう。 私がシャワーを浴び、メイクを直してから何度か彼に声をかけたけれど、
一向に起きる気配はありません。
私は少し離れたソファーに座り、彼に電話をしてみました。
私とのデート中は彼の携帯電話は常時サイレントモードになっています。
眠っている彼はベッドサイドの携帯電話の着信ランプにも
全く気づいていません。
私は思わず苦笑してしまいました。
私が彼と電話が繋がらないのはこういう時だと
妙に納得してしまいました。
「Tさん。」
少し大きな声で呼んでみました。
「あれ?もう用意出来たの?」
服を着てソファに座っている私を見て、彼は驚いています。
「今、電話してみたんですよ。^^」
彼は自分の携帯電話を手に取ると、
「ほんとだ…。」
と言いました。
「ぐっすり眠ってましたね。何度か声をかけたんですよ。
疲れてたんですね。」
彼がいつもの調子で私をからかいました。
土曜日の午後、電話したいと彼にメールを送りました。
自宅にいた彼から今ならいいよとすぐに返信。
「俺の声が聞きたかったの?」
「まあね。^^」
「まあねって何だよ。
声が聞きたかったって言いなさい。^^」
「あはは。」
「6月のレストランの予約、取れたよ。」
「ありがとうございます。
すごく楽しみ〜。
早く食べたいなぁ。」
「それまでにまだ何度か会うんだから。^^」
「そうだけど…。
それまで美味しいものは控えておこう。^^」
彼の言うとおり、本当は声が聞きたかっただけ。
オフの日に自宅にいる時の彼の声は、
オフィスにいる時よりも甘い響きがします。
会えなくて寂しい時、10通のメールよりも1本の電話の方が
ずっと即効性があると思いました。
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