ゲレンデバーゲンで初めて遠出した日の夜、
私達はシティホテルのレストランのテーブルで、
向かい合って食事をしていました。
彼が初めてGで長距離ドライブをした感想を言いました。
うるさいというのは走る時に風を切る音のことです。
「ユーザーレポートを読んでいると、
『金庫みたいな車だ。』とか、
『これ一台だけだと辛い。』とか色々出て来る。(笑)」
彼の話を聞いていると、
Gは彼が長年ずっと乗っているセダン型のベンツに比べて
不便な点も幾つかあるようです。
「普段使いするなら今までのベンツの方がいい?」
「そうだな。Gは高速を走るのには向かないかもしれないな。
初めて乗ってみて結構疲れたよ。」
「私は自分に例えられたから、Gの味方をしちゃう。
Gを悪く言わないで。^^
私はあの車大好き。」
「ホテルの駐車場のおじさんに
『乗り換えたんですか?』って聞かれたよ。^^」
「もし私と付き合っていなかったら、買わなかったかもしれない?」
彼はしばらく無言で考えている様子でしたが、
「そうかもしれないな…。」
と言いました。
「扱いにくい車だってTさんならちゃんと操縦出来るでしょ?」
私はGと自分を重ね合わせて、彼に聞きました。
「そうだな。余裕が無ければ買わない車だよ。」
「若い頃だったら買わない車でしょ。
でも、前のベンツの方が乗り心地がいいなんてちょっとショック。
Gは普段使い出来ないの?」
「何言ってんだよ。
Gの方が前のよりずっと高価な車なんだよ。」
「レアなんでしょ?
私はレアな女じゃないよね。」
「初めはそうでもなかったけど、だんだんレアになってきた。^^」
ちょっとしたたとえ話に過ぎないのに、
私はやっぱり普段使いされる一台目になりたかったなと思ったり…。
でも彼の好奇心をいつまでも惹きつけられる二台目なら、
それでもいいような気もするのでした。
この夜、ベッドで愛し合う前に、彼は私を抱きしめて、
「今日はきっと乗り心地がいいよ。^^」
と囁きました。
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