8、生命
一、深夜午前二時 冴えわたる月の清さ 散在する星の凛洌(りんれつ)さ 無風の大気 停止した無音 冷明な美質 広大なスケール 人間の力の及ぶところではなく 生命の存在の無力を知る それでも小さな世界で 自力で抵抗して 生きなくてはいけない
ニ、月も星も 自己より巨大な実在である けれど生命体は ひとつの個体として 形成されていて 主観を持ち 自己を誇張する
9、春月
一、求道者の辿(たど)りつく静寂 冷酷な風は途絶えて 無風の澄みきった大気の中に 皓皓(こうこう)と輝く月 暗黒の天空一面に散らばって 燦然(さんぜん)と煌(きら)めく星 春の清くみずみずしい月は 少年のように若く美しい
ニ、繊細で多感な少年は 天上に懸かる 青白い 鋭い月を見つめている
三、花の匂う 一面菜の花畑の上に 青ざめて 月は懸かり その麗(うるわ)しい光景が 全面に広がっていた 春のうるんだ空に 月だけが 清明に きよらかに 光っていた
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