あたたかなおうち
華

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■ 寝言

夜、布団の中で
今日あったいろいろなことを祐ちゃんに報告する。


考えたこと、感じたこと、
日常の中で起こったささいな出来事。


それでね、それでね…と子供のように私は話す。
祐ちゃんは優しく相槌を打つ。


腕枕している手が
ゆっくりと頭をなでていてくれている。


そのとき祐ちゃんが突然口を開いた。
じゃあ、それ黒板に書いて
私は驚いて祐ちゃんを見つめる。


祐ちゃんがはっと気づいて決まり悪そうに笑う。
私も笑う。
寝ぼけてたんだね
笑いながら優しい気持ちになる。


祐ちゃんは夢の中でも先生なんだね。

2004年11月29日(月)

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■ 清潔

祐ちゃんが泊まりにきた。


お風呂に入った後の祐ちゃんがとても好きだ。

男の人とは思えないくらいのきれいな肌と、
男の人特有の腕の筋肉。

清潔なたくましさが一層際立つ。

しかしどうしてこの人は、全く男臭くないんだろう。




2004年11月24日(水)

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■ 結婚記念日

今日は両親の結婚記念日だった。
22回目の。


電話をすると、すぐに母の機嫌の良い声が聞こえた。


私はおめでとうと言い、母はありがとうと言う。
今日は一日父とデートしてきたのだという。

あら、よかったねぇと私は言う。
母は照れながら嬉しそうに話す。


私はそんな母が本当に可愛いと思う。


父は今日見た映画の話をする。
少し酔っているのだろう、饒舌になる。


二人が歩んだ22年という月日のほとんどを
私は一緒に過ごしたきた。



幸せを形にしたようなふたり。

あんなふうに人を愛したいと心から思う。



2004年11月23日(火)

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■ 保険

祐ちゃんが生命保険のパンフレットを持ってきた。
学校でもらったんだ
と言って。


私は、保険についてよく知らない。


生命保険は、就職したら入るものなの?
結婚したり子どもができたら入るものかな


インターネットでいろいろな保険を調べながら祐ちゃんが言う。


自分のために入るものじゃないからね
死んじゃった後のことなんだから
自分に守るものができたら入るんだよ



守るもの、か…
私は祐ちゃんの横顔を見ながら聞いてみる。


守るものができたの?


祐ちゃんはちらりとこっちを見て、
目を細めて言う。
そうだね
と。優しい声で。

2004年11月19日(金)

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■ 筆談

久し振りにサークルに参加した。
引退してからすっかり顔を出さなくなった。


少し遅れていくと、メイが小さく手を振っている。
ほっとして、私は笑顔で隣に座る。
まわりはもうほとんどが後輩ばかりだ。


会議中、声を潜めてメイと筆談をする。
たわいのない話。
ふたりでくっくと笑う。


その時、メイが小さく声を上げた。
あっこれ
私は笑って頭を掻くしぐさをする。
メイはおどけて私の肩を押す。


良かったね、華
私の左手を見ながら、穏やかに笑って
メイはさらさらと綴る。

2004年11月18日(木)

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■ 連絡

11時を過ぎても祐ちゃんから連絡がない。
何かあったんだろうか。
電話をしてもつながらない。


心配だな…


そう思っていたときに電話が鳴った。


ごめん、飲み会に連れてかれて
祐ちゃんが息を切らして話す。
走りながら話しているんだろう。
ああ、そうか、良かった…
そかそか、大変だったねぇ
今から行かせてもらってもいいですか?


今日は祐ちゃんがうちに来るかもしれないと
私が期待していたことを、知っているんだろう。


本当は、こんな時間に来るなんて大変なはずなのに。
本当は、私が来てもらう立場なのに。
『行かせてもらってもいいですか』なんて。



かなわないなぁ、祐ちゃんには。
電話を切って、お風呂を溜めながら苦笑する。



2004年11月17日(水)

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■ 探し物

朝、出掛ける前の忙しい時間に、
祐ちゃんはいつも何かが見つからないと騒ぐ。


今日は原チャの鍵だった。


あれれ
どこいったかな
メイの彼氏も一緒に探す。


クッションをひっくり返して、
ヘルメットの中を見て、
テーブルの上にもない、
ソファの横にもない、
床には…ない。


探し物をしているというのに
ほのぼのとした空気が流れる。
もはや朝の風物詩だ。


あ。
上着のポケットに手を突っ込んで、祐ちゃんがつぶやく。


みんなで小さくほっとする。
メイの彼氏はもうマンガに目を移している。


いってきます
祐ちゃんが子どものように言う。


さて、今日も一日頑張ろう。

2004年11月16日(火)

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■ 依存

彼氏のいない友達の姿が、眩しく映ることがある。


私は、依存している気がしてならない。

友達に恵まれていても、
きちんと日常をこなしても、
将来の夢があっても、

祐ちゃんがいつも私の中にいる。


もしかしてもう、
一人では生きていけないのではないだろうか。


そんな話をすると、
祐ちゃんはちょっと困った顔をして、
何も言わずに頭をなでてくれた。



寝るときに、
電気を消して手をつないでから、
祐ちゃんが言った。

寂しいこと言わないでさ
え?
ひとりで生きてく、とかさ

寝返りをうって、こちら側を向いて、
祐ちゃんが私の頭をぽんぽんとたたく。

一緒に生きていきましょうよ


そうか。
人は支えあって生きていくんだ。

2004年11月15日(月)

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■ 左手

おめでとう

祐ちゃんの手に小さな箱がある。
私は驚いて祐ちゃんを見上げる。

てっきり一緒に買いに行くものだと思っていた。
今まではいつもそうだった。





左手に

小さなダイヤのついた華奢な指輪。


2004年11月14日(日)

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■ 誕生日

今日、21歳になりました。


私を支え、励まし、
共に歩んでくれるすべての人たちに
心から感謝します。


ありがとう。


2004年11月13日(土)

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■ パンフレット

目が覚めると、
祐ちゃんはもう出掛ける準備をしていた。


服装を整えて、上着を着てから、
祐ちゃんはテーブルの上のパンフレットに目をとめる。

私が最近、ジュエリーショップでもらったものだ。
手に取り、パラパラとページをめくる。
ところどころしげしげと眺める。
何度も。記憶するように。


誕生日に、私の欲しいものをと思っているのだろう。


たまらなく嬉しくなる。
私は泣きそうになりながら、
必死でまだ眠っているふりをする。

2004年11月11日(木)

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■ 親離れ

祐ちゃんのいない朝。
一人で目覚めることに、違和感を覚える。


少し笑ってしまう。


昔は、家族以外の人と眠るなんて
考えられないと思っていたのに。


今やきっと母親と眠るよりも
祐ちゃんと眠るほうが安心するのだろう。


不思議な感じがする。

2004年11月10日(水)

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■ 誕生日

実は、もうすぐ誕生日を迎える。
21歳になる。

何が欲しい?と祐ちゃんが尋ねる。
手紙!と私は答える。

ああ、そうだ…
2年前にも同じ会話をしたことを思い出す。




何が欲しい?と聞かれて、
手紙が欲しい、と答えた。
祐ちゃんの整った字が、とても好きだった。
手紙でいいの?ケーキとかにしたら、と祐ちゃんは笑った。

サークルのみんなが開いてくれた誕生会に
本当に大きなケーキを二つも焼いてきてくれた。
みんなで笑った。
とても上手だった。

でも
誕生会が終わって、家に帰ると、
郵便受けにちゃんと手紙が入っていた。



祐ちゃんと一緒にいたら
私は幸せに時間を過ごし、
幸せに年を重ねていける気がする。




2004年11月09日(火)

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■ 日常

久し振りに祐ちゃんが私の家に泊まった。


ちゅちゅと遊んでやって
というと、ころころと遊んでいる。


私はご飯の準備をして、テーブルに運ぶ。
祐ちゃんはまだ遊んでいる。


私は思わず微笑む。


はいはいご飯ですよー
母親のように優しい声で言う。

2004年11月08日(月)

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■ 仲直り

バイトの後、祐ちゃんの家に行った。

いつも通りにソファで本を読む祐ちゃん。
いつも通りにただいまと言う私。
何でもない会話を交わして
いつも通り、私はまかないのお弁当を食べる。

…
…
ごめんね!
ううん、ごめんっ!



ふたりで笑う。


いえいえこちらこそ…、
いえいえいえこちらこそ…、
いえいえ…


笑いながら手をつなぐ。



これで喧嘩はおいまい。

これからが本当のいつも通り。

2004年11月07日(日)

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■ おうちに帰ろう

この間喧嘩をして
祐ちゃんの家にはしばらく行くまいと思った。



昨日のお昼に、メイと遅いランチに行った。
メイがゆっくりと将来の話を始める。


私たちが卒業する再来年には
あの家に誰もいなくなるのかなって思うと
寂しくて。



デザートの杏仁豆腐を口に運びながら
メイは続ける。


きっと今の私たちの暮らしは、すごく特殊なことなんだよね。
年をとってから、あの頃は毎日毎日
楽しいことばかりだったなぁって思い出すんだろうね。



メイの言葉は、私をあたたかく包む。
意地を張っていた気持ちがするすると解ける。
どうしてこの子は、
いつも私の欲しいものを与えてくれるんだろう。


店員さんが、熱いジャスミンティーを注いでくれる。


やっぱり、今日も祐ちゃんの家に行こう。
みんなのいるあのうちに帰ろう。



2004年11月06日(土)

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■ 喧嘩

祐ちゃんは忙しいから
祐ちゃんは疲れてるから
負担にならないようにしよう


そんなことばかり考えているから、
ときに、私の中の糸が
音を立てて切れる。


いつもは決して口に出さない言葉が
涙とともに、溢れ出してしまう。
止めることができない。


自分が大嫌いになる。


そんな私を、祐ちゃんはきつく抱きしめる。
押さえこむように。







2004年11月05日(金)

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■ お寿司

昨日は私たちの記念日だった。

特別な日に行くお寿司屋さんがある。
親方ひとり、お手伝いひとりの
こぢんまりとしたお店だ。

扉を開けると
いつものように二人が笑顔で迎えてくれた。

祐ちゃんと親方は世間話をしている。
私は耳を傾けながら、たまに相槌を打つ。

お寿司は勝手に出てくる。
まるでわんこそばのように
こちらがストップをかけないと、親方は延々と握り続ける。

あっ私はもう結構です
あわててお皿の前に手をかざす。
もういいの?じゃあもう2つだけ食べようよ
親方は大きなお腹で笑いながら、すでにうにを握っている。

親方は食べさせ方を知っている。
気がつくと、いつもお腹が苦しくなるほど食べてしまう。

帰り道、苦しい苦しいとうめく私に
祐ちゃんはくすくす笑って手を差し出す。



2004年11月03日(水)

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■ 上着

祐ちゃんの家に泊まった。

昨日、居間に脱ぎ捨てたはずの上着が見当たらない。
おかしいなぁ…
ふと上を見ると
丁寧にハンガーにかけてある。

あっ、ありがとう!!
メイの彼氏にお礼を言う。
メイの彼氏はパソコンに向かったまま
振り返らずに言う。
ああ、落ちてたから
当たり前のように。

私は笑顔になる。
華、行こうか
玄関から祐ちゃんの優しい声がする。
私は上着を取って、ぱたぱたと玄関に向かう。

さりげない思いやりが溢れる
あたたかい人たちとの、あたたかい暮らし。


2004年11月02日(火)

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■ 冷蔵庫

私の冷蔵庫は真っ白で、
もらったポストカードやら手紙やらが
マグネットでぺたぺたと貼り付けてある。

その中にある、小さなカードの言葉。
久し振りに手に取り、ゆっくりと読み返す。

『いつでも帰ってらっしゃい
  特急で
 交通費、入れておきます   母』


交通費は今でも使わずにとってある。

それはなんて幸せなことなんだろう。

2004年11月01日(月)
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