あたたかなおうち
華

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■ 年賀状

祐ちゃんのプリンターがフル回転している。
同僚やクラスの子供たちみんなに年賀状を出す。
慣れない筆ペンで一枚一枚コメントを書く。


コメントに行き詰まると、
関係のない字を広告の裏に書き始める。
自分の名前、私の名前、友達の名前、
話題の人、そして今テレビで言った言葉…


広告が真っ黒になっていく。
気に入った文字を何度も何度も書いている。
私はこれ書いて、あれ書いてと注文する。


年賀状はちっとも進まない。


2004年12月28日(火)

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■ 涙

昨日は祐ちゃんのうちに泊まって
今朝そのままバイトに行って
昼過ぎに家に帰った。


ちゅちゅの家を軽く叩く。
ちゅちゅー、ただいまー
いつもなら寝ぼけて出てくるのに、出てこない。
少し強めに叩く。でも起きてこない。

はっとした。
気がついてしまった。


ちゅちゅは冷たくなって、眠っていた。


涙が溢れて溢れて止まらない。
祐ちゃんにもらった指輪の箱が、
丁度ちゅちゅのサイズだった。
静かに入れて、周りに花をたくさん添える。


もっともっと長生きできたのに。
ごめんね、ごめんね、ちゅちゅ。。


明日、祐ちゃんと海に流してきます。

2004年12月25日(土)

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■ 朝

朝起きると、祐ちゃんが隣に寝ていた。
昨日は忘年会だったので、始発で帰ってきたのだろう。


本当に無防備な寝顔をみせるひとだ。
私と選んだ白いカットソーのまま、着替えもせずに。
白が、よく似合うなあ、と思う。
私はおでこに口づけする。


ふいに祐ちゃんの腕が私を包む。
愛してるよ、華。愛してる
目を閉じたままで祐ちゃんが呟く。
寝言、なのだろうか。



ちゅちゅがまた元気に動き回るようになった。
ほっとした。

今度は私が元気になる番だね。


2004年12月23日(木)

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■ 大切

カーディガンを衝動買いした。
服を買うのは久しぶりな気がする。


私にしてはめずらしい、淡い黄色を羽織る。
そういえば冬物は黒やグレイばかりだ。


顔色が明るく見える。
髪がだいぶ伸びたことに気づく。
もうすぐ背中に届く…。



自分をもっと大切にしなくちゃ。


2004年12月22日(水)

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■ 包む

不安定になっている私を
祐ちゃんが優しく包む。


おいで
ソファでゲームをしていた祐ちゃんが手を広げる。


私をすっぽり包み込んだかたちで、またゲームを始める。
背中と両腕に祐ちゃんのぬくもりを感じる。


体重を預けると、心臓の音が伝わってくる。
私は思わず耳をすませる。


2004年12月20日(月)

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■ あし

朝、ちゅちゅのおうちを見ると、
後ろ足がゲージに挟まって変な方向に曲がっていた。


私は血の気が引いた。


変に曲がっているので、そこから動けない。
一晩中もがき続けていたのだろう。
自分で引っ掻いたような傷と、血の痕がある。


私は夢中で
なかなか外れない足を、思い切って動かした。

するりと足が抜ける。

ちゅちゅがころんと転がる。

私は脱力して座り込む。
全身のちからが抜ける。



ちゅちゅを手のひらに乗せる。

ちゅちゅの足は動かなくなった。

2004年12月15日(水)

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■ 羽

祐ちゃんが針金で作った羽をくれた。
学校の工作で作ったのだという。


壁の高いところくくりつけながら、祐ちゃんが言う。

華には羽があるからね


私は泣きそうになる。
もう、だめだ。
自分に自信がもてない。
何をやってもうまくいかない。
…本当に先生になれるんだろうか。


“魔女の宅急便”のキキ、飛べなくなるでしょ


羽をつけ終えた祐ちゃんが、私の隣に座る。
おでこにキスをしてくれる。


でもキキは、また飛べるようになったでしょう?


私は涙が溢れてうなずくことしかできない。

2004年12月14日(火)

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■ 服

祐ちゃんの服を買いに行った。


祐ちゃんが振り向いて、持っている服を見せる。
これとこれはどっちがいい?
こっちがいいな
じゃあ、こっちにする
祐ちゃんはにこにこして「こっち」のセーターをかごに入れる。


祐ちゃんは、何でも私に選ばせる。
自分のなんだから自分で選んだら、と言っても

華が選んだのが一番いい
という。


たまに、子供みたいな祐ちゃん。



2004年12月13日(月)

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■ 湯たんぽ

祐ちゃんは仕事があるので、一人で先に布団に入る。
布団はとても冷たい。
猫のように丸まって眠る。


祐ちゃんが布団に入ってきた時、目が覚めた。
華、足、冷たいね
冷え性なので冷たい私の足を
自分の足で包むように温めてくれる。
私の顔を、自分の厚い胸にうずめるように抱っこしてくれる。


あったかい…


私はたちまち二度目の眠りに落ちてしまう。

2004年12月10日(金)

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■ 花びら

母から手紙が来た。

私は高校時代に家を離れたので、
もう何年も母と手紙のやり取りをしている。

たわいのない話、日常の出来事が綴られ、
最後にこんな一文が添えられている。

今更おかしいのですが
お父さんのことを
深く深く愛していることに気がつきました。




大学1年の春、一人暮らしをしてまだ間もない頃に
母からの手紙が届いた。

桜の花びらが丁寧にティッシュに包まれて入っていた。
たった、一枚だけ。

地面に落ちてしまう前の花びらは
幸せのお守りなのだそうです。


舞い落ちる花びらを
一生懸命追いかける母の姿が目に浮かぶ。


お母さん、
私は本当にお母さんの娘に生まれてきて幸せです。

2004年12月08日(水)

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■ ぬいぐるみ

よく二人でゲームセンターに行く。


祐ちゃんはUFOキャッチャーがとても上手だ。
毎回たくさん取ってくるので、
部屋はぬいぐるみで溢れている。


祐ちゃんが大きなくまさんのぬいぐるみを取った。
まわりから小さな歓声が起こる。
さすがだね、祐ちゃん
私はくまさんを赤ちゃんのように抱っこする。


くまさんを抱く私を、女の子がじっと見ているのに気がついた。


祐ちゃんはもうひとつ取ると言う。
もう、取ったのに、と言いそうになって口をつぐむ。
私は祐ちゃんの考えていることがなんとなくわかった。


また、くまさんが落ちる。
まわりからどよめきが起こる。
祐ちゃんはくまを取り出すと、
まだ近くにいたあの女の子に手渡す。


かっこよかったね
帰り道、とても幸せな気分になる。
私から手をつないで笑いながら歩く。



2004年12月07日(火)

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■ 風邪

風邪を引いた。


咳が止まらない私を、
祐ちゃんがとても心配してくれる。


薬買ってくるよ
ううん、大丈夫
いや、いってくる。待ってて
祐ちゃんが急いで上着を着て出て行く。



目が覚めると朝になっていた。
テーブルの上に薬と手紙が置いてある。


「帰ってきたらすやすや寝てるんだもん。
 びっくりしたよ(笑)
 起こしちゃうと大変なので今日はこのまま帰ります。
 あったかくして、ちゃんと薬飲むんだよ」



私は薬を手にとって眺める。
帰ってきて拍子抜けした祐ちゃんが目に浮かぶ。


嬉しさがこみ上げる。

2004年12月06日(月)

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■ 成績

成績をつける時期。
祐ちゃんは忙しそうにパソコンに向かう。


一緒に起きていようと決めて、
私は祐ちゃんの隣で勉強する。


「華」
と呼ばれてはっとする。
目の前に祐ちゃんの顔がある。
「寝るならお布団で寝なさい」
お父さんのような声が優しく響く。


思わずにやけてしまう。
私は祐ちゃんに起こされるのがとても好きだ。

2004年12月05日(日)

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■ 返事

今日は祐ちゃんよりも早く家を出た。

私は手紙を書いていこうと思いつき、
短い文章を綴る。
メモのような、小さな紙に。



帰ってくるともう祐ちゃんの姿はない。
朝と同じように、
小さなメモ用紙がテーブルの上に置いてある。


私の字の下に、祐ちゃんの字が付け足されている。

2004年12月03日(金)

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■ 靴下

祐ちゃんは原チャで学校に行く。
朝、出かける時間が本当に寒い。
たくさん重ね着していく。


あっ、靴下はかなきゃ
雪だるまのようになった祐ちゃんが、
靴下をはこうとする。


…
雪だるま祐ちゃんは
体が曲がらなくて、手が届かない。


その姿が不相応でかわいらしくて、
私は思わず笑ってしまう。


私は笑いながら、靴下をはかせる。
母親のように。
今度は先に靴下はこうね
子供のように祐ちゃんが頷く。


さあ、今日も頑張ろう。


2004年12月02日(木)

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■ おでん

コンビニに行くと、たいていおでんを買う。


祐ちゃんを好きになって3度目の冬を迎える。
最初の冬、まだ祐ちゃんがただの先輩だった頃、
一緒におでんを食べたことがあった。


いつまでもこの時間が続けばいいと思った。
この人の近くにいたいと思った。

私は思わず不思議なことを口走ってしまう。
来年も一緒におでん食べてください
あたたかな湯気が鼻を赤くする。
私はいよいよ恥ずかしくなる。



祐ちゃんは少し驚いて、
楽しそうにふわりと笑って
うん、食べよう
と言ってくれた。
やさしい人だと思った。


今年もまた、おでんの季節。




2004年12月01日(水)
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