あたたかなおうち
華

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■ 特別

来週、祐ちゃんと食事に行く約束をしている。
少し背伸びしたお店で。


特別な日だ。


空気の匂いや、風の温度に、
ふと付き合い始めた頃のことを思い出す。

まだ幼さの残る私が、思い出の中ではしゃいでいる。
自分のことなのに、たまらなくいとおしくなる。


手紙を書こうと思って、文具屋さんで便箋を探しながら
何を書こうかと考え始めると
伝えたいことが溢れてしまって、私は思わず選ぶ手を止める。




2005年01月30日(日)

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■ 別れ

メイが彼氏と別れた。
急なことだったので、私も祐ちゃんも驚いた。


2年と4ヶ月という月日を、
本当に仲良く、楽しそうに過ごしてきたふたり。
いつも一緒にいたのに、
喧嘩なんてほとんどしなかったふたり。

でも、お互いに、ゆずれない夢があった。


自分でもびっくりするくらい平気なんだよね
私と同じお酒を飲みながらメイが呟く。
まだ実感がないのかな


これからどんどん、楽しかったことばっかり
思い出しちゃうのかなぁ…



笑っているメイが痛々しくて、私は胸が締め付けられる。



2005年01月29日(土)

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■ よるのこと

祐ちゃんに愛されているとき
私は生まれてきてよかったと思う。


息を切らした祐ちゃんが、私に体重を預ける。
私は頭や背中を何度も優しくさする。
軽いキスをして、頬を寄せて、ありがとう、と言う。


そんなに頑張らなくてもよかったんだよ
私は祐ちゃんを抱きしめて言う。
こんなに疲れてるのに

だって、もったいないんだもん。幸せすぎて
息を整えながら、祐ちゃんがにこっと笑う。


祐ちゃんは、まるで壊れ物を扱うように
優しく優しく、そっと私のことを包むように抱きしめる。

2005年01月28日(金)

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■ メール

5時を過ぎる頃に、毎日必ずメールを入れる。

『お疲れ様』


毎日遅くまで頑張っている祐ちゃん。
仕事が終わって携帯を見たときに
何もメッセージがないのは寂しいだろうから。


『疲れたー』

返事が返ってくるのは、たいてい9時を回った頃だ。
そのメールを見て、
今日も無事に帰ってきたんだとほっとする。

2005年01月27日(木)

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■ 勉強

久しぶりに、祐ちゃんのいない夜。
もの寂しいような、気楽なような、複雑な気分になる。


好きな音楽を聴いて、
好きな入浴剤を入れて、
のんびりとお風呂につかる。
お風呂上りに、冷えた炭酸水を飲む。


こういう時、
自分のペースを思い出すことができる。


おやすみ、とメールをして
テスト勉強に集中する。
すぐに祐ちゃんから返信があって
まだ起きてるんだ、と私は嬉しくなる。


2005年01月26日(水)

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■ 平気

母に電話をする。


忙しいんだね、無理しないでね
と、母は必ず言う。


平気平気、大丈夫
と言いながら、私は自分が安らぐのがわかる。


母のその一言が聞きたい私。

2005年01月25日(火)

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■ 卒業

卒業したら1年間ほど実家に帰ろうかと考えた。


高校進学を機に家を出て、
それからずっと家族と離れて生活している。


就職したら、一生時間に追われる気がする。

私には、実家で学びたいことがまだまだたくさんある。



夜中に近くのコンビニに行く。
二人とも、ジャージにサンダルの格好で。
その話をすると、祐ちゃんは珍しく嫌がった。

俺はやだ…
子供のようにふくれる祐ちゃんがいとおしくなる。
華のいない生活は寂しいもん
私は笑って祐ちゃんの手を取る。
祐ちゃんは、つないだ手を
私の手ごと自分のポケットにつっこむ。


じゃあ、卒業したら一緒に住んでくれる?
祐ちゃんは前を向いたまま、優しい声で言う。
卒業したら、華をもらいに行くつもりですよ

2005年01月24日(月)

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■ ふくろう

テレビの上に、ふくろうが2羽置いてある。


手のひらにすっぽり収まる
小さなお手玉のような。


ふくろうは、『福を呼ぶ』んだって
母がそう言って送ってくれた。
ひとつひとつ丁寧に手作りして。


ちょこんと座った2羽は
父と母のように見える。


2005年01月21日(金)

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■ 長生き

祐ちゃんが死んでしまう夢を見た。


はっと目が覚めて隣を見る。
祐ちゃんの姿はない。

居間のこたつで寝息をたてる祐ちゃんを見つけて
私は少しほっとする。
パソコンにスクリーンセーバーがくるくると動いている。


祐ちゃんは、ある日突然
死んでしまうのではないか?

たまにそんなことを考えて、恐ろしくなる。


こたつで寝ている祐ちゃんを起こす。
祐ちゃんが死んじゃう夢見た
私は子供のように言う。
過労死しそうだもん(笑)

私は情けない声で祐ちゃんに尋ねる。
祐ちゃんの方があたしより先に死んじゃうんだよね
華より長く生きてるから、いづれはね
そか…やだなぁ…

夢のせいもあって、私は本当に泣きそうになる。
祐ちゃんは笑って私の頭をくしゃくしゃにする。
じゃあ頑張って生きて、華が死んだ次の日に死ぬから。
だから寂しくないよ。安心しなさい



恥ずかしいけれど、私はそれを聞いて、
祐ちゃんの思いやりが嬉しくて涙がこぼれた。

2005年01月20日(木)

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■ やせた

最近みんなにやせたね、と言われる。

忙しかったせいなので、
喜ばしいことではないのだけれど。

祐ちゃんはコンビニのお弁当を食べている。
今日、やせたって言われたよ
私は首をかしげた格好で祐ちゃんを眺める。
だめだめ。ちゃんとたくさん食べなさい
祐ちゃんは少し厳しい口調で言う。
俺と一緒に三食食べるようにしよう
体力つけなきゃ
もっとぷにぷにしなきゃ


でも、と笑って祐ちゃんは付け足す。
おでぶちゃんになるのはいやよ
私も笑う。
おでぶ華になったら嫌われちゃうんだー
そうよー
でもきっと、祐ちゃんはそんなことじゃ人を嫌わない。


祐ちゃんは私の、本当に本当に大切なパートナーだ。

2005年01月19日(水)

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■ 赤ちゃん

いとこに赤ちゃんが生まれることになった。
電話越しに母が嬉しそうに話す。
子供は宝物だからね
昔からそう言って私たちを大切にしてくれた。


それはおめでたいねぇ!
仕事でパソコンに向かっていた祐ちゃんが微笑む。
頬杖をついて、祐ちゃんの横顔を眺めながら私は言う。
ね、男の子かな、女の子かな
…
手を止めてこっちを見て、祐ちゃんがにこっと笑う。
華、俺の子供絶っっ対かわいいよ

私は思わず笑う。
祐ちゃんはたまに、急にこんなことを言う。
いとこの話だってば



子供が大好きで、
他人の子供まで可愛くて仕方のない祐ちゃんは、
きっと世界一のパパになる。

2005年01月18日(火)

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■ 胸まくら

祐ちゃんはいつも、胸まくらをしてくれる。


祐ちゃんの胸に、私の頭はすっぽりとおさまる。
あたたかくて大きな手が、頭を優しくなでてくれる。


祐ちゃんの胸の厚みも、
しっかりした腕も、
優しい手も、あたたかな体温も、
何もかもが私にはちょうど良い。


ぴったりだ
と私が言うと、
華の特等席ですから
と祐ちゃんがやわらかく笑う。


2005年01月17日(月)

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■ 命

心肺蘇生の実習があった。


私たちは練習用の人形に、
人工呼吸と心臓マッサージを繰り返す。
何度も何度も、体に記憶させるように。


先生が高らかに叫ぶ。
自信を持ってね
その技術で人を救えるから




阪神大震災から10年。

本当に小さな小さな私が
誰かの命を救う技術を身につけている。

それだけで、私の生きる意味のひとつになる。

2005年01月16日(日)

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■ センター試験

弟から電話がきた。
手紙が届いたという。


湯島天神の鉛筆と、ささやかなメッセージ。
姉としての精一杯の、応援と祈り。


まあ、やれるだけやってくるよ、と
弟は力強く笑う。


こういうとき、私たち家族はひとつになる。

2005年01月15日(土)

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■ 女性

最近、母とよく電話をする。


いつのまにか女同士の会話をするようになった。


何かの話をしていて、
祐ちゃんのほっぺのにおいが好きなんだ
と私が言うと、
お母さんは、お父さんの枕のにおいが好きよ
と母が嬉しそうに言った。

なんだかおかしくて、私も母も吹き出してしまう。


女に生まれてよかったなぁ。




2005年01月12日(水)

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■ お料理

初めてハッシュドビーフを作った。


電話で夕食を用意したことを告げると
作ってくれたの!
と祐ちゃんは子供のように喜んだ。
そういえば、
最近はバイトのまかないばかりだったことに気づく。


帰宅する時間に合わせてお鍋を温める。
部屋中に湯気がたちこめて、鼻の頭があたたかくなる。


2合炊いたご飯を、
祐ちゃんはおいしい、おいしいと平らげてしまった。
あっけにとられる私の前で
祐ちゃんはごちそうさま、と言いかけて
まだ残ってた!
と、ほうれん草のお味噌汁を飲み干す。

そして改めて手を合わせる。
ごちそうさま

その顔が好きだから、私はお料理が好きになった。





2005年01月11日(火)

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■ 洗濯物

今日は天気がいいので、たまっていた洗濯をした。


いくつか混じっている祐ちゃんの下着や服を
私は丁寧にハンガーにかける。

その大きさに改めて気づく。



祐ちゃんの着ている服から
私の家の洗剤のにおいがして
恥ずかしいような、幸せな気持ちになる。

2005年01月07日(金)

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■ 家族

年明けは実家で過ごした。


毎年来客でごった返すこの時期に、
今年はたまたま家族水入らずのお正月になった。

受験を控えた弟が、私のために時間を割いてくれる。
たった一人の兄弟であり、幼い頃から誰よりも仲がいい。
降り積もった雪でゆきだるまを作る。
大きなものから、小さなものまで、いくつもいくつも。

そこに、父と母が加わる。
お正月の夜更けに、家族4人のトランプが始まる。
ババ引き、7並べ…。懐かしい遊びばかり。
笑い声がいつまでも響く。


父は、お正月のようだ、と何度も言った。
私たちは、お正月なんだよ、と言って笑った。



お正月が終わると、私と弟はそれぞれの家に帰る。
もっともっと、ここにいたいと思う。
父と母がいつまでも手を振っている。

ちょっとだけ泣きそうになる。


帰りの道中、祐ちゃんに電話をする。
気をつけて帰ってくるんだよ
祐ちゃんの声が優しくて、私はいよいよ泣きそうになる。


2005年01月06日(木)
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