てくてくミーハー道場

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2008年07月27日(日) 別冊少年☆新感線(特別増刊号)

※前日に見てきた芝居の感想です(エンピツでは1日に2回エントリできないため)





SHINKANSEN☆RX『五右衛門ロック』(新宿コマ劇場)

タイトル通り、まんま束(厚さ)が10cmはありそうな分厚い少年マンガ誌の読み切りそのものな内容だった。

ぶっちゃけ中身は大して深くもないのだが(出てくるキャラクターの造形なんか、みんな良く知ってるあのキャラクターをパクりまくりなんだが)、その解りやすい「正義」「情熱」「友情」(これまたどっかで聞いたことがあるスローガン)が、どストレートに迫ってきて、心地よくお腹いっぱいになる。

分厚い少年マンガ誌と同じで、これを電車の中で堂々と読む(エンゲキで言えば、「こういうのしか観ない」)のは“いい大人”として恥ずかしいに違いないのだが、こういうのをハナからバカにして全く知ろうとしないというのも、人間として寂しいと思う。

新感線作品(というか、ぼくにとっては「中島作品」てことなのだが)て、そういうものである。

観客に小難しく考えさせるというストレスを与えないために、作ってる側はかなり重度な頭脳+肉体労働をしているのがありありと判るところも嬉しい。

奉仕されるの大好き( ̄ー ̄ )←なぜ今S宣言?




そして、いつものことながらいのうえ演出には脱帽しっぱなしなぼくなのである。

(こっから先、暴言)「あんまり実力ないけど美貌は抜群の女優」と「新感線作品にでも出てなけりゃ、若い観客は観に行こうなんて思わない大御所俳優」を、こんだけ最大限にカッコ良く創り上げる技は、今回も天下一品であった。


松雪泰子は新感線作品は2回目で、前作『吉原御免状』でもいい女っぷりだったが、今回は“まんま峰不○子”←意味ないけど伏せ字

松雪自身、ホントはすごくいい女優なのかもしれないが、代表作『フラガール』を(例によって)観てないし、すぐ比べるのが悪いクセだが、『キャバレー』のサリー・ボウルズは大して良かったと思えなかったので、少なくとも「舞台女優としての松雪泰子」を上手に使えるのは、いのうえひでのりの方が秀でているのではないかと思う(←腰が引けた表現するな!)


そしてなんつっても北大路欣也。

白い犬になったり、千葉にしか見えない(こら)ニューヨークで田植えしたりと、最近一体どうしちゃったのか謎な大御所俳優なのだが(もちろん、“華麗なる”正統派大御所ぶりも発揮しているが)、はっきり言って、この「クガイ」という役は、彼の輝かしい仕事史の中に、今後もぜひとも略さず刻み込んでおいていただきたい。俵源五郎はいいから(こらっ、おいっ!!/怒)

このクガイというキャラこそ、別冊少年☆新感線を厚さ10cmの「特別増刊号」たらしめているスーパーキャラなのだから、そんじょそこらの小劇場役者が(こら、なんで差別的な書き方するだ!)単純に老けづくりしてできるような役ではないのだ。

北大路欣也ほどの(特に時代劇における)キャリア、存在感の持ち主だからこそできたのである。

まさに動く等身大「ラオウ」(ビジュアルは違うけど)なのであった。


さらに、江口洋介。

チラシで、出演者だけ判ってて配役がまだ判らずにいた頃、まさか(色んな意味で)こんな役とは思わなかった。

実は、彼が「五右衛門」役だと思ってた。芸能界の序列的に。(←貧しい発想)

ところが、案外脇筋の(といっても、重要度は高い)役なのであった。

そう、松雪が不○子なら、江口は完全に銭△なのであった(*^^*)

なので古田新太は、「五右衛門なのにル▼ン」という、楽しくもややこしい話なのであった(^^ゞ

ゲスト俳優なのにカッコつけた二枚目じゃないのだが、銭△がそうであるように、要所でカッコいいこと言ったり、得意のギターを弾いたり、おいしさ抜群の役を楽しそうに演じていた(重畳重畳)


そう、江口もなのだが、再度新感線登板の森山未來、お初の川平慈英、濱田マリと、ゲストには全員「得意分野」を遺憾なく発揮できる見せ場(ダンス、タップ、歌)が用意されている。

ここに、「役者に親切」「観客に親切」「興行主に親切」というシェイクスピア&河竹黙阿弥なみの「いのうえひでのり三親切」精神が表れており、感動させられる。






ただ、ここまで褒めちぎっといてアレなんだが、こうしてビッグプロジェクトになってしまうと、元々の団員は、何となく(決してザコ扱いではないのだが)「手駒要員」な感じに見える。

それは作品にとっては決して悪いことではないし、全員その力量及び地位にふさわしい役に付いてはいるのだが、どうしても役の付き方が「ゲスト偏重」になってるのは否めない(考えてみれば当たり前である。団員が演じて済む役なら、ゲストを呼ぶ必要はないのだから)

「劇団☆新感線の本公演」というのを、しばらく観てないな──と、ふと思った。

つうか、ぼくは純粋な「本公演」なんて観たことあったんだっけ?(『いんど屋敷』あたりはそうかも)

つうか、「本公演」なんてのを、今後やる気はないんじゃないかな? こういうのが新感線の今後の本道なのだ、と思っといた方がいいのだ、きっと。

そして、久々に中島×いのうえ作品を観て実感した。

(完全にぼくの「好み」で言うのだが)いのうえ演出には中島脚本、中島脚本にはいのうえ演出が、やはり一番なのだ。

名作ではないけど(だから、一言余計だっつの)大傑作でありました。


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