| 2021年05月03日(月) |
Nと連絡がとれなくなって、嫌な予感しかなかった。その予感は当たっていた。Hちゃんが気を使ってNのところまで車を飛ばしてくれて、知った。首を吊ったこと。お母さんがそれに気づいてすんでのところで縄を切り、命だけは助かったこと、そのまま保護入院になったこと。 諸々のことがどっと押し寄せて、私の頭は真っ白になった。また友人を自殺で失うところだったかもしれないと思っただけで、ぞっとした。しかもそれがNという、十年来の友人だったかもしれないという、もう、考えるそばから解離を起こすしかないような。 すべての実感がない。どこか他人事で。もはやどうにも変えることのできない現実の前でただ、呆然と突っ立つ私は、すべてから距離があるかのように感じられ。何もかもが映画か何かの世界のような。そう、私の目の前で淡々と流れる映画のような。そんな、感じ。現実なのに現実じゃあない。私の細胞のすべてが現実としてそれを感じることを拒絶しているかのような。 よりによって何故Nが。ここにきてなぜNが。と、私のぼおっとする頭はひたすらそれを連呼している。何故、よりによって何故Nが、今。 ここまで必死に生き延びてきたじゃないか。何とか生きてここまで辿り着いたんじゃないか。なのに何故。 なんて、そんなこといくら問うたって意味なんてない。もはや、こうなってしまった以上、何の意味もない。問うだけ無駄なのに。 Nよ、私はあなたの頑張りをよく知ってる。これでもかってほど知ってる。ねぇさん、ねぇさん、あのね、といつも報告をしてくれるあなただった。つらいこともかなしいことも。「いつもしんどい話ばっかねぇさんに報告してるから、たまにはいいことも報告したくて頑張ったよ」なんて、そんな場面もあったよね。とても嬉しくて、私は電話のこちら側でにこにこにこにこ笑ったんだった。 すべてが泡のように弾けてしまう。飛んでいってしまう。私の手をするり抜けて、どこかに消えてしまう。 保護入院がいつ解けるのか、今はもう何も分からないです、とお母さんが言っていた。今回は長くかかるかもしれないと、それだけ思っています、とも。 私に何ができるんだろう。何ができなくて、何ができるだろう。 少しずつ夜闇が緩み始めるこの時刻。Nは眠れているだろうか。病院は今コロナ禍で、お見舞いを一切受け付けていないのだという。親族さえダメなのだという。そんな中、Nは辛い思いをしていないだろうか。 私がどんなに蹲って、唇噛んで蹲っている時でも、時は容赦なく流れ続ける。待ってなんてくれない。こんな時でさえも。 できるのは、私にできるのはだから、ただ生きて在ること。生きてここに在って、彼女が戻ってきた時には笑って出迎えること。 それしか、思いつかない。
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