ささやかな日々

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2021年09月06日(月) 
霧雨から始まった。空を見ようと起きぬけにベランダに出て、ふわふわと粉のように舞う雨に気づかされる。どうりで空が暗いはずだ。雨雲に一面覆われて、どよんとしている。右に左に舞う細かな雨粒、私はカメラを持っていた右手を下ろして、左掌で雨を掴もうと試みる。もちろん掴めやしないのだけれども。

薬丸岳著「虚夢」読了。勢いで立て続けに薬丸岳の本を読んでしまった。でも、「Aではない君と」の方が私にはしっくり来たせいで、ちょっと消化不良。また時期を置いて読み直そうと思う。
半藤さんの本も読みたい本が数冊溜まっている。赤坂さんの本も。活字拒絶症状が長く続いたおかげで、ちっとも読書が進んでいない。未読の本にグラシンでカバーをそれぞれにかけながら、早く読まなくちゃなあ、と反省する。私の活字拒絶が再び来るのは間違いないのだから、その波が来るまでの短い間、飢えた子のようにがっついて読書をするのだ。改めて自分にそう言い聞かす。私が読める時間はひとより短いのだから。

午後、雨が止んだと思い込み自転車で息子のダンス教室へ。でも送り届けた直後から雨がざっと降り出す。参ったな、と、空を見上げても雲の切れ目は見えず。さっきまであんなに陽光がさしていたのに、うまく騙された気分。
雨宿りをしながら手紙に返事をしたためる。8月末に受け取っていたお手紙への返信。でも、雨が気がかり。

来週一週間家人は留守。関西方面へ展示へ出掛ける。その前準備で今、家の中がごたごた散らかっている。掃除機をかけたい、と思っても、下手に家人の机の近くを掃除できない。大事なものが転がってるかも、と思うと気が気じゃない。そんなこんなで、掃除機じゃなく掃き掃除になる。栃木方面に出掛けた際仕入れた箒でしゃっしゃと為す。それが一番無難な方法。

息子が育てているカブトムシが無事産卵した。卵を一個一個スプーンで拾い上げ、別の虫かごに移す作業。私の老眼では無理なので、息子と家人にやってもらう。私は見ているだけ。果たしてこの卵は無事かえるのだろうか。不安いっぱい。

ダンス教室での息子のふるまいを見るにつけ、学ばさせられる。たとえば彼の、ちょっとひねながらも踊り続ける姿。私がもしあの場にいて先生からあんなふうにからかわれたり注意されたりしたら、固まってしまって身動きとれなくなるんじゃなかろうか。でも息子は、どんなにからかわれようとどんなに叱られようと、その後も動き続ける。そんなの当然でしょ、と返されるかもしれないが、私には決して当然なんかじゃない。今クラスで男子は一人。みんな上手になって男の子は全員上のクラスに移動してしまっている。彼一人大勢の女の子に囲まれながらの練習。時々女の子から肘鉄受けながら、それでも彼は今できることを一生懸命為している。私は最初そのことに気づけないでいた。Aちゃんのお母さんのMさんが、「ほら、頑張ってる頑張ってる、ちゃんと踊り続けてる、すごいすごい!」と。言われてようやっと、彼の凄い点に気づいた次第。情けなや。
でも、気づいて以来、感心しきり。そして、私も似通った場面に出会った時は彼を見本にしよう、と心に決める。すぐ挫けたり固まったりするのでなく、とにかく動き続けて今できるベストを積み重ねよう、と。
先週よりも今週、昨日よりも今日、ほんの少しでも、お!と思えるところを。それがたった一か所、たった一瞬であろうと何だろうと、それが大事なのだ、と彼の姿から私は教えられた。
ダンス教室からの帰り道、天気は不安定。時折ぱらぱらっと降る雨の中、ひたすら自転車で走る。西の空の上の方、雨雲にぽっかり穴が開いている。そこから見える青空の何と鮮やかなこと。
「母ちゃん、すごいね、雲の向こうにはいつも晴れた空が拡がってんだよ!」
「うん、そうだね」
「ね、空の向こうには何が拡がってるか知ってる?」
「ん?」
「宇宙だよ、そこには星もいっぱいあるんだよ」
「そうだね、うん」
「人間は一番星が光り始めても全然気づいてくれなかったりするけどさ、星はちゃんとそこにあるんだよね」
「うんうん、そうだね」
家に帰る頃にはこの会話も彼は忘れてしまうに違いない。あっけらかんとした表情でテレビに見入り、けたけたと笑うに違いない。
だから代わりに私が覚えていよう。

東の空、斜め方向、一番星がちかちか光る。


浅岡忍 HOMEMAIL

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