| 2022年01月14日(金) |
家人が買った蜜柑がちょっと古くなってきたので、ジャムにすることに決める。いや、明日食べればそれで済む、とも思えたのだが、明日の加害者プログラムを控えて眠れそうにないから、それならいっそ、ということでジャムを作り始める。 蜜柑の皮をゆっくり剥いて、できるだけ白い筋は残して、ミキサーにぽいぽい入れて。ペースト状になった蜜柑を今度は鍋に移し替えて、弱火で煮る。 ことこと、ことこと。きび砂糖を使う予定が、ほとんど残っていなくて、迷った末目の前にあった蜂蜜を使う。黄金色の蜂蜜が瞬く間に溶けてゆく。橙色の海に。 ことこと、ことこと。半分くらい煮詰めたところでレモンをたっぷり絞り入れる。スプーンでほんのちょっと掬って舐める。ま、このくらいかな。 ことこと、ことこと。ジャムを煮詰めるのは、気持ちを煮詰めるのと似ているとふと思う。ことこと、ことこと、ゆっくりジャムを煮詰める。ことこと、ことこと、ゆっくり気持ちを確かめながら煮詰めていく。そうしてできあがったジャムは翡翠みたいにきらきらして静かに横たわってる。気持ちも、そうやって煮詰めると静かになる。そんな気がする。 はっと気づいた。瓶。瓶はあったっけ。慌てて台所をぐるり見廻す。ちょうどいい具合にほんの一口だけ中身の残っていた瓶が幾つか。これはもうぺろりんと食べてしまおう。そうしてこれを煮沸して、と。 だいたい30分から40分、弱火で煮詰めれば、最初のペーストの量が半分以下になっている。とろりんといい具合にとろみがついて、橙色の海はいつのまにか、ジャムに姿を変えている。できあがり、だ。 煮沸し終えた瓶に次々詰め込んでゆく。ここは手早く。さささっと。これで作業完了。友人の分と実家の父母に送る分と、それから明日会う友人の分も。そんなことをあれこれ考える時間が私は結構好きだ。あのひとに贈ろう、このひとに贈ろう、喜んでくれるかな。そんなことをあれこれ思い転がしながら、ひとり心があったまる。そういう時間。
明日の加害者プログラムでは、記念日反応について伝える予定になっている。そういえば。阪神淡路大震災の日まであと数日。きっとその日は、あれから何年、と繰り返しニュースが伝えるのだろう。私はそれを聴きながら、ああ、私のあの日からももう何年か、と思うに違いない。阪神淡路大震災とサリン事件、そして自分の被害。1995年はそういう年だった。
今日は通院日で、カウンセラーから出された宿題をプリントアウトして持っていった。あれこれ吟味してくれたカウンセラーから、さらなる宿題を出された。ひとの機嫌を窺わずに、それはそのひとの責任の範疇の事柄、と、放ること。いやそれ、言うのは簡単だけれど私にはかなり難しいのでは、と私が苦笑すると、カウンセラーがウィンクして、すぐにできなくてもいいのよ、まず気づくことから始めて頂戴、と。なるほど。 主治医に、最近時間があっという間の時ととてつもなく長く感じる時と波があって、という話をする。過食嘔吐やリストカットの衝動にかられ、いやもうそんなことはだめだと一生懸命自分の衝動を抑えているのだが、という話も。主治医は、あなたの場合そういう抑圧がそのまま身体化されるのよねえ、と。身体化?と訊ねると、解離性健忘のことを言われる。こちらもまた、なるほど。 帰り道、本を読もうと一度本を拡げたのだけれど、どうしても活字が追えずに諦める。また活字読めない状態に突入したらしい。仕方ない。そういう自分ともつきあってゆくしかあるまい。
そうこうしているうちに午前4時。煙草を一本吸ってみる。先刻まで明日だったものが今日になった。ワンコがカウンター越しにこちらをちらちら見ている。わかってるよ、朝の散歩の時間が近いんだよね。もう少し待って頂戴。 煙草の煙がしゅるしゅると、換気扇に吸い込まれてゆく。唐突に祖父がよくやってくれた、煙草の煙のドーナツを思い出す。祖父は何個でも煙ドーナツを作って私や弟を喜ばせてくれたっけ。大事な想い出のひとつ。 |
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