ささやかな日々

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2022年06月15日(水) 
雨の朝。ワンコに、ごめんよ雨なんだ、と謝ることから始まる。帰ってきたらその時は雨降ってても降ってなくても散歩行くからね、待っててね、と。繰り返し言い聞かす。
橙色の小ぶりの薔薇が咲いている。そこだけぽっと灯が燈ったかのように明るく見える。そういえばうちには赤やピンクの薔薇はない。私の好みがあからさま。いつかくすんだ赤色の大輪の薔薇も欲しいな、とは思うのだけれど。まだな気がする。きっと、当分先。
アメリカンブルーがぽつ、ぽつ、と咲き始めて嬉しい。もう病葉は今一枚もなく、美しいきれいな緑色の葉が茂るばかり。ありがたいなと思う。もうあんなひどい病気にさせないためにも、日々見つめて過ごそうと思う。
でもそれは植物だけの話じゃぁない。ひとだって、誰かが見守っていてくれる、と思うと強くなれたりするものだ。誰も自分を見守っていてはくれない、と思えてしまっているうちは、足元が不安定で心も閉じがちだったりする。植物もひとも、つまり、自分を見守ってくれる誰かの存在によって、美しく花開いたり輝いたりできる。

この二週間、頭痛の回数やホットフラッシュの回数、身体痛についてをできる範囲でメモし続けた。思っている以上にホットフラッシュが頻発していることに気づく。それと身体痛、毎日どこかしらに痛みが生じている。整骨院の先生にそのことを話す。特にこの二週間は夜になると足の甲が痛むのと左下半身が重怠くなるのが酷かった。先生が私の立ち姿をチェックすると、「あー、螺旋状に身体が捩れてるよ」と苦笑。え、と私が振り返ると、こっちがこっちに、そっちがあっちに捩れてる、と教えてくれる。私、これをこっちに直そうと思って頑張ったんですけど、と言うと、それ故に捩れたんだねぇとさらに笑われた。施術中に、家でできるケア方法を3個ほど教えてもらう。
頭痛については、緊張型だね、とぼそっと呟いて、いつものようにマッサージしてくれる。てっぺんから後頭部にかけてマッサージされると、まさに言葉通り、痛気持ちいい、という具合に。左肩のこわばりも酷くて、先生がせっせと解してくれる。
とりあえずまた二週間後、その間はセルフケアをせっせとして過ごしてね、と言われる。でも。この病院に来始めた頃を思えばどれほどよくなったか。最初は週に2、3回ここに来ていた。ああ、でも、その前は別の整形外科のSS先生に、ブロック注射を週に2、3回打ってもらっていたんだったっけ。あの頃は本当に痛みが酷くて。そんな具合だった。それを思えば、今はなんて快適なんだ。私、日々元気になってるじゃないの、と、にんまりしてしまう。

帰宅すると家人が帰宅していて。「寂しかったぁ?」とにまにましながら訊いてくるので、ちっとも寂しくなかった、と即答すると、「いやいや寂しかったでしょ!」と。いやいや、私も息子ものほほんと留守を楽しんでいたのだよ家人。ほんとに。だって、そういう機会なかなかないでしょう?・・・と言いかけて、やめといた。家人がショックを受けそうだから。心の中だけにしまっておくことにする。

被害に遭い酷いPTSDと解離を背負って何度も就活するもその度人間関係で躓き仕事を続けられなくて苦しんでいるAちゃん。だのにAちゃんの周囲の友人らは、働けないのはAちゃんの努力が足りないからだと非難するそうで。
冗談じゃない、本人が一番努力し苦しみ自分を責めてる。被害者を余計に追い詰めるような真似、どうしてするんだろう。善意? いや、そういうのは善意の悪意っていうもんだ。
性暴力被害に遭った後何が一番苦しいって、それまで培ってきた人間関係が根本から崩壊することだ。ひととの適切な距離感、信頼関係、そういったものが根こそぎ破壊される、それが性暴力だ。一度崩壊した他者との距離感や他者との間に培う信頼関係といったものを再構築するには、長い長い年月がかかる。ふつうひとはそれを幼い頃自然と身につけ育む。それを今度は意識して、まさに、再構築、していかなきゃならない。その間ずっと被害者は、被害を引きずり続けることに、なる。
でもだからって、被害者が笑うのはおかしいか? 喜んだり泣いたり笑ったりするのはそんなにおかしいか? 被害者としておかしい? 
冗談じゃない。被害者である前に私たちはひとりの人間だ。笑いもするし泣きもする。全身で叫びもするし沈黙もする。世間の抱く勝手なイメージを、私たち当事者に押し付けないでほしい。
私は被害から二十何年生き延びて来られた。でも途中で散った友人たちも多くいた。被害者のレッテルを貼られ続けいまだ笑うことさえ怯える毎日を過ごしている友たちもいる。そんなのおかしい。被害に遭って多くを失い病を被ったからこそ知れたこともある。私達が幸せになってはいけないなんて誰が決めた?
嗚呼、お願いだから死なないで、みんな。諦めないで。幸せになることを諦めないで。幸せを味わうことを拒絶しないで、放棄しないで。あなたたちはもっともっと幸せになっていい、笑っていいし泣いてもいいし喜んでもいい。そこに生きてることだけでもう、それは素晴らしいことなんだ。

だからお願い。生きて。


浅岡忍 HOMEMAIL

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