ささやかな日々

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2022年07月05日(火) 
息子の朝顔が、最初の二輪三輪咲いたきり、全然咲いてくれない。どうしたんだろう、と朝顔の隣に立って気づく。葉の何枚かが茶色く変色している。もしやアメリカンブルーと同じ灰かび病になっていやしないか? 不安になる。ちょくちょく様子を見てやらないと、と思う。

今日は、舞踏家Sさんと久しぶりの撮影。改札口で待っていると、いきなり声をかけられる。誰かと思えばSさん。いつものスキンヘッドではなく、髭ぼうぼう、髪の毛くりくり、で現れたものだから、誰だかちっとも分からなかった。正直あまりのむさくるしい様に驚いて吹き出しそうになってしまう。「どこまでむさくるしくなれるか、やってみようと思ってサ」なんてSさんが言うから、なおさら笑い出してしまいそうになる。
朝から強い陽射し。Sさんは裸足で踊るから、アスファルトが熱々になってしまうと困る。早々に撮影開始。
Sさんの舞踏は数年前から、大きく変化した。彼の身体に癌が見つかった前後だったと思う。癌が分かったことをきっかけに、彼が自分の身体を改めて省みるようになったことが大きく踊りに影響したんじゃないかと私は勝手に思っている。精神的にも、それまでのSさんと少しずつ少しずつ異なる部分を感じるようになった。
それまでのSさんの踊りは、大きく動く踊りだった。風を、空気を切って踊る、そんな踊りだった。自ら風を起こそうとしているかのような動き方をしていた。それが、いつしか、風の波動を掬い取るような舞踏に変わった。前の大振りな踊りを知っている私から見ると、それは大きな大きな変化で、最初頭がついていききれないほどだった。
台風が近づいているという今日、風は強烈で、容赦なく吹いていた。以前のSさんだったら、その強烈な風に、さらに自らが風を起こし勢いづいて踊ったんじゃないかと想像する。でも今のSさんは、風に乗るように、静かに最小限の動きしかしない。それが今の彼の踊りなんだろう。私はじっと、彼の舞踏を追う。
それにしても。髪の毛や髭があるだけで、頭の大きさが坊主だった時の2倍3倍に見えるって、すごい。髪の毛や髭ってそれだけの存在感があるのだと改めて知る。
場所を変えようか、ということで自転車で走り出す。最初F山まで走る予定だったのだけれど、裏道とかどお?ということで思いついた、中華街脇の裏道。以前ちらっと見た覚えのある蔦で覆われた工場。行ってみたらまだあった。早速撮影。
感触として、この場所が一番、今日のSさんの踊りに合っていたと思う。撮っていてそう感じられた。それまでちょっと上滑り感のあった私の中の何かが、この時かっちり合った。そんな実感。
撮影後、珈琲屋へ。食べながらSさんが、音の波動の話をしてくれる。そういえばこの前もそんな話をしていたなぁと思い出す。音の波動によっていろんなものが浄化され得る、それは病細胞までも、と、Sさんは言う。もっと調べて勉強しようと思ってるんだ、と。
Sさんの話は、感じとして分からないわけじゃなかった。そうだったらいいよね、と私も思う。でも。そんなんで癌細胞まで消え去るのであったら、私の祖母は何故全身癌に侵され死んだのだろう、祖母だけではない、祖父も叔父も大叔母も。みんなみんなみんな、何故癌で死んだのだろう? Sさんの話は興味深いことは興味深いのだけれど、親族全員癌で死んで失っている私には、音の波動で癌細胞が消滅するとはちょっと受け容れ難いのだった。
近々、写真と舞踏の話でもしようよ、と約束して別れる。そういう話し合いというか対話も、時として重要。できるだけ早めにその予定を組もう。


浅岡忍 HOMEMAIL

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