2022年07月07日(木) |
曇天。もくもくと棚引く灰色の雲は、いつ雨を落としてもおかしくない装いで。そのせいなのか何なのか、朝から頭痛が酷かった。ずきんずきんといつもの箇所が痛んで、苦しかった。 こんな日は。頭痛薬もたいして役に立ちはしない。呼吸を深くして、一歩一歩、確かめながら歩くことくらいしか、やれることは、ない。
唐突だが。 昔々の、子どもの頃のことだけれども。よく、出来のいい子、と言われた。何でもできる優秀な子、とも。 でも、本当は、出来のいい子なんかじゃぁないことは自分が一番よく分かっていた。ひとが見ていないところで努力して努力して努力して、ようやっと他人より少しできる、学校の勉強をそれなりにこなせる子、に化けてただけだ、って。だから、周りからそう称されれば称されるほど、私はそのプレッシャーに圧し潰されそうになっていたし、呼吸が苦しかった。完璧ないい子にならなくちゃ、と、いつも焦っていた。 今なら。完璧ないい子、なんてものはいないんだよ、ないんだよ、と思う。あの頃の自分に、だから、そんな焦らなくていいよ、できなくていいよ、大丈夫、ほかのだれがあなたを見捨てても私はあなたを見捨てたりしない、と言ってやれる。 当時は無理だった。とてもじゃないけれど。周りの評価についていかなくちゃと足掻いてた。あの焦りは、私の身を焦がすくらいに激しいものだった。 間違ったことをしてはいけない。いつでも正しくいなくてはいけない。そうも思っていた。いつだって、いい子、でいなくちゃいけない、と。 遠い、昔のこと。
完璧な人間なんて、この世界のどこを探しても恐らくいない。みんな、何かしら間違うものだ。間違って、転んで、痛い思いをして、そして知る。完璧なんてないし、いい子なだけのいい子はいない、って。もちろん、時間がかかるかもしれないけれども。
出来のいい子、優秀な、何でもできる子、は、やがて挫折を味わう。実際私は学校を中退もしたし、犯罪被害者にもなったし、何度自殺未遂なんてもんも試みたかしれない。完璧なんて何処へやら、もうこれでもかってほどずたぼろになって周りにも迷惑をかけて、そうして今、ここに、いる。
つくづく、思うのだ。完璧な、正しいだけの人間なんていない、と。みんなどこかで間違う。間違った時声をかけてくれる隣人がいるかいないかの違いなのだろうなと。犯罪者になってしまう前に声をかけてくれる誰かに出会ってほしい。犯罪者となってしまう前に。そして、被害者をうんでしまう前にどうか、気づいてほしい。 忙しい人たちが増えた。大人も子供もみんな、忙しい。そんな中、きちんと丸ごと話を聞いてくれる他者の存在が、欠けているのかな、と。思うのだ。 忙しすぎて、自分のことだけでもう手いっぱいすぎて、他人にかまけていられない。そういう世の中なんだろうけれど。でもこの、「欠け」が、やがて歪みに、偏りに、なっていってしまうのかもしれない、と、そう感じる。 歪んでしまう前に、声を掛け合えないものなんだろうか。 女はもっと男に寛大になれ、とか何だとか。寛大になれと言うのならまず自分が隣人に寛大になれよ、と思う。 忙しすぎる社会の弊害があちこちにあって、時々、茫然となってしまう。私もその、社会の住人のひとり。自戒を込めて。 |
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