バビロンまで何マイル?
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2006年09月04日(月) 10W病棟(1)

病室廊下の窓から見える高層ビル群が雲にかすんで、それがまるで長崎の「軍艦島」みたいだなぁと毎日思っていた。

入院の説明を受けて病棟に上がる。この病院の最上階だ。(入院前にいろんな病院のHPを見たけれど、どうしてこの手の病棟はどこも最上階なんだろう?)
入り口の鍵が小さな音を立ててロックされたとき、私はここに来たことをものすごく後悔した。
入院は自分の意志で決めたことだったのだが、かかりつけ医の「クックル先生」は「別に入院までしなくてもいいんじゃない?」と言っていて、それを「家にいると何するか分からないから」と押し切った形だったからだ。
「クックル先生の言うことは間違ってなかったんだなぁ…」と半分うなだれながら、荷物チェックを受けた後(ここでカミソリやら袋についてた紐やらMD、PHSを没収された)、ついてきてくれた家族と別れ、看護師に付き添われて病棟内に入る。どこに行くにもナースの持ってる鍵が必要だ。

4人部屋の病室に行く。中にいた人に軽く挨拶をするといきなり「暑がり?寒がり?」と聞かれる。「暑がりなんです」と言うとみんなが「よかったー」と。何でもエアコンの調節でトラブルが絶えないのだそうだ。私が入った病室は幸いにも全員暑がりだった。
それからホールで昼食。他の人はすでに済ませたらしく、テレビを見たりトランプをしたりしている。…あ、喫煙所がある。煙草吸って良いんだとちょっとだけほっとするが、緊張のせいか病院のヤケにあっさりした食事が喉を通らなかった。

食事をしてから採血と問診。看護師さんはおおむね優しい。問診はいかにも医者然とした若い男性。今までの人生とか聞かれた。
入院の説明をしてくれた医師(問診した医師の上司)は飄々と「じゃ、ちょっと休みますかー」と言う感じで、もらった書類にも「任意入院だから開放扱いでいいよ」ということが書いてあったので自由に外にでられるのかと思った(病棟自体は閉鎖)ら、1週間は外出できないとのこと。急に心細くなる。
病室に戻り、カーテンを閉め切ってぐったりする。本当に心細い。これからどうなるんだろう…そればかり考えていた。不安が治まらないので、頓服の薬を一錠もらって飲んだ。そしたら眠くなってきたので、少しだけうとうとできた。

夕方、気を取り直して喫煙所に行ってみる。私は新しい環境に置かれると、喫煙所から話のきっかけを掴むことが多い。
案の定、先客たちから「今日入ってきたんですよね?」と聞かれた。「いやぁ、ちょっと鬱がこじれて」などとあっさり言えるのは、同じような病状を抱えているからこそ言えることなのかも知れないなとふと思う。
夕食をもそもそ食べ、後は持ってきた本を読んで過ごす。薬の時間を向こうから言ってきてくれるのはいいなぁ。

9時消灯。電気がふっと消えたとき、涙が出てきた。不安でしょうがなかった。ティッシュで涙を抑えつつ、眠気がくるのを待つ。やっと眠れたのは3回目の見回り(消灯後、1時間おきに夜勤の看護師が見回りに来る)の後だった。

(続く)


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