バビロンまで何マイル?
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今日は入浴日。入院以来初めてのお風呂で私はわくわくしていた。姐さんに「入ってきてからそればっか言ってた(笑)」と言われたが楽しみなんだから仕方ない。いそいそと順番を取り、着替えを用意してじっと待機。時々順番を覗きに行く。 浴室はシャワーが2つと湯船。せっせと髪と身体を洗い、お湯につかる。ああ気持ちいい。実を言うと家では「風呂はいるのマンドクセ」という方なのだが、やっぱり風呂は良いねぇ。しかも朝風呂。出てちょっと涼んだら朝食だ。なんだか贅沢。
さっぱりしてご機嫌でごろごろ(やっぱそれか)していたら、検査だと呼び出される。胸部レントゲンと心電図。翌日には頭部のCTスキャンと胴部エコーだ。胴部エコーの時は食事制限をされたので朝食食えず。検査が終わってからパンと牛乳、フルーツの「食待ち食」なるものが出た。それを完食して、さらに1時間後の昼食を完食してしまう。やっぱ良く食うな、自分。 ちなみに検査の結果は「異常なし」だった。…血液検査の結果がダメだっただけで(苦笑)。
この日は一日落ち着いて過ごす。私は緊張がピークに達すると感情のコントロールができなくなる(たいてい泣きっぱなしになる)のだが、それを越すと急激に環境に慣れるという癖がある。前の晩にそれをやらかしたため、慣れてきたんだろう。 とはいえ食堂でテレビを見たり他の患者さんとトランプしたりするのは気が進まなかったので、基本的にはベッドでごろごろしながら本を読んでいたのだが、時々食堂に行くこともさほど苦にならなくなってきた。よく「連れモク」していた姐さんのせいもあるかもしれない。そのせいか、入院中の喫煙量が普段の倍に増えたが。 他の患者さんとも軽く話ができるようになってきた。 「(ガラスの仮面)もう半分まで読んだの??」 「残りも今日中に読めるかも」 「みんな入院中に一度はハマる(男性も真剣に読んでいた)けど、かをるさんが最速だねぇ(笑)」 「子供の頃から30過ぎまで『花とゆめ』ずっと買ってたから、ストーリー分かってるし」 最初あれだけ怯えていたのに、何とかなるもんなんだな。
洗濯などもするようになる。自分でできない人は家族に汚れ物を持って帰ってもらうことになるが、できる人は自分でやる。 病棟に全自動洗濯機があり、順番表に名前を書いておくと空き次第呼んでくれる。専用のプリペイドカードがあり、1回100円。 洗濯が終わった頃また呼び出され、乾燥室(スキー場なんかにある暑い部屋を想像してもらえると良い)に干す。 この部屋にも当然鍵がかかっていて看護師に開けてもらうのだが、陽気な看護師さんが鍵を開けながら、 「10Wのハワイへようこそー♪」 だと。言い得て妙だ(笑)。 午後になると「乾燥室を開放するので、洗濯物を取り込んでくださーい」という放送が入る。でも厚手のものはなかなか乾かない。 私はたいてい翌日まで干しっぱなしにしておいた。
担当医師には「まだ外出できないですか?」と毎日聞いていた。「閉じこめられている」という感覚がどうにも嫌だった。 「まあねぇ、もう少しゆっくり休んでもらってから…」 外に出られないと休めないわヴォケ。
この日は両親が見舞いに来てくれた。私は梨が好きなので、むいて持ってきてくれた。食べながらいろいろ話をする。 日頃はものすごい親不孝者なのだが、こう言うときに来てくれるとほっとして涙が出そうになる。入院前に預けたハムスターは母が可愛がってくれている様子。いろいろ安心して、消灯しても泣かずに眠れるようになってきた。…といっても、消灯後の見回りを1〜2回は見送ってからじゃないと眠れなかったんだが。
(続く)
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