やんの読書日記
目次昨日明日


2003年04月21日(月) 炎の戦士クーフリン

ローズマリ・サトクリフ作 ほるぷ出版

ケルトの原典。アイルランド神話の中心クーフリンの物語。
クーフリンといえばアイルランドの戦争「牛捕り」が有名で、
サトクリフのオリジナルにもところどころ出てくる。
太陽の神、槍のルガの息子クーフリンは力と知恵の英雄。
クランの猛犬という名前の通り、猛犬を素手で殺してしまうほど。
牛捕りで、クーフリンをわなにかけた女王メーブの書き方が、
闇の女王ボーディッカと王のしるしのリアサンにそっくりで驚いた。
完全に配偶者である王をないがしろにしているからだ。
同じアイルランドでも、メーブのいるコノハトは女系社会。
クーフリンのアルスターは男系社会。というのがよくわかる。
彼の武器は女戦死アイフェから譲り受けた魔法の槍ゲイ・ボルグ。
危険な槍で殺してしまったのは、親友と実の息子の二人だけだった
というのが運命的で悲しい。この部分が、アーサー王によく似ていて、
何か関連がありそうな気がする。
自分の名前にかけて、犬を食べないという禁忌を守り通したクーフリンが
最期のときになって、犬の肉を魔女にすすめられるままに食べてしまう。
渡し場で血のついたものを洗う老婆。それがケルトの英雄の死を現す。
これを見たらどんな英雄でも運命は変える事ができない。
ケルトのどんな魔法も英雄の死を覆すことができない。
悲しいのに立派ですがすがしい、
それがケルトの戦士なのだろう。


やん |MAILHomePage

My追加