やんの読書日記
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2003年11月23日(日) テムズ川は見ていた

レオン・ガーフィールド作
斉藤健一訳
徳間書店

原題 The december rose
18世紀のイギリス、煙突掃除の少年バーニクルが
仕事中に煙突の中で盗み聞きしたのは国家を欺く陰謀。
それと知らずに陰謀を暴く鍵を握るワシの紋章がついたロケットを
手にいれたバーニクルは陰謀に巻き込まれ命を狙われる。
12月のバラ号で運ばれるはずの資金を横取りしようと
たくらんでいる政治の黒幕と、
そうとは知らずに利用されているだけの
クリーカー警部。
バーナクルを煙突掃除から救い出して
はしけの番人にしたゴズリング、
はしけの持ち主マクディパー婦人と娘のミランダ
ロンドンの一般市民が素朴な姿で登場するのがいい。
バーナクルが陰謀に巻き込まれたと知ったとき
大物政治家の不正を暴こうと正義心を燃やすゴズリングと
「自分たちはただの市民だ、危ないことはやめてほしい」と願う
マクデイパー婦人のどちらにも親近感を感じた。
白髪をストーブの黒炭で染めて若作りしているブロドスキー大佐は、
黒幕の不正を暴こうと暗躍している人物にはとても思えない
滑稽さがあって、なぜか応援してしまう。
最終的には自分が信じていたものが不正だとわかって
失望したクリーカー警部によって、黒幕は片付けられるのだが
彼をそうさせたのは、イギリスの良心
バーナクルとゴズリング、はしけの人々の心持によるものだとわかって
さわやかな気分になれた。


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