やんの読書日記
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星野道夫編 文藝春秋
星野氏がカメラマンだということは知っていたが 随筆がこんなにすばらしいことを初めて知った 旅をする木というのは、アラスカの南東部の暖流が寄せる 比較的暖かい森林地方にある針葉樹のことだ アラスカの高山から流れ出す雪解け水で 河岸が侵食され、生えていた樹木が倒れて押し流され アラスカの北極圏の海岸にまで流される そういう木の旅を大きな時の流れとして星野氏はとらえている。 短編の随筆集で、一番興味深かったのが トーテムポールの発見談と アリューシャン列島からわたってきたモンゴロイドの話だ。 トーテムを作った人々は 氷河期にシベリアからアリューシャン列島を 歩いて渡ってきてアラスカやカナダに定住したらしい 日本人にもよく似た顔つき 鯨をとり、自然を崇拝する人々は どこかでつながっていると思っていた私は この章を読んで、やっぱり、という確信にとらわれた。 氷河期からしてみればたかが2000年で めまぐるしく変わってしまった人と地球を、 憂えながら自然のなりゆきを大きな心で見ている 星野氏の哲学が感じられて 胸がどきどきした。
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