やんの読書日記
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ヘルマン・ヘッセ作 新潮文庫
ヘッセの少年時代をハンスとヘルマンという二人の少年を 借りて描いた作品 初めて読んだのは中学生のとき そのあと何度も読んでいるが 久しぶりに読んでみて新しい感動があった。
親の期待を一身に受けて神学校を受験し、2番で合格。 しかし、神学校の息の詰まるような規則や 友人関係に疲れ、悪友の感化によって脱落していく少年。 故郷に戻っても彼の居場所はなかった。 行き着くところは死。 そういう筋書きはいつ読んでも同じなのに 若いころに読んだときは、周囲の好奇の目 過剰な期待に押しつぶされて彼は死んだと思って憤りを感じた。 その間にながれるヘッセ独特の詩的な描写に気付かなかったのは どうしてだろう。故郷の川、森、花神学校の湖、 そういうものが生きて流れているのだ。
彼はなぜ故郷で自分を見つめることなく死んでしまったか。 絶望して泣き崩れる彼の心が痛いほど伝わってくる。 若いころ、自殺だとばかり思っていたが今では そうではなかったように思える。 ほんの少しの休息を川に求めて、そのまま落ちてしまった。 事故なのだ。本当はヘッセはここで生き方を考えていたはずだ。
だからこそ風景描写がすばらしいのだと思う。
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