やんの読書日記
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2004年10月29日(金) トリスタンとイズー

ローズマリ・サトクリフ作
井辻朱美訳
沖積舎

トリスタンとイズーといえば
伯父の王様が見初めたイズーと恋仲になってしまった
トリスタンが、イズーと逃避行をして
その果てに王に仲を引き裂かれ
トリスタンの最期にイズーが間に合わずに死んでしまう
と言う悲劇。
わたしの知っているトリスタンとイズーは
媚薬を飲んで恋仲に陥るのだけれど
サトクリフのは自然に恋に陥ってしまう
元の話は、アイルランドのフィン・マックールから
来ているらしい。同じサトクリフの作品で読んだことがあるので
そこのところはよく似ていて納得できた。
年の全然違う老王より若くて強い王子の
トリスタンがいいのは当たり前かも

イズーが火あぶりにされる日
トリスタンが勇者の跳躍をして断崖の孤島の窓から
海へ脱出する場面。レプラ病みのマントを着て
イズーを助ける場面。
そこのところはサトクリフのオリジナルのように
思える。「落日の剣」にも同じようにハンセン氏病の
マントを着て救出に現われるトリスタンがいる。

どの場面よりもやはりトリスタンが死ぬ場面が
いちばん悲しい。イズーが会いにやってきたなら白い帆
そうでなければ黒い帆を揚げた船が見えるというトリスタンに
白い手のイズーは嫉妬のあまり「黒い帆の船が来た」
と言ってしまう。白い手のイズーの貞節さを思えば
その発言が痛いほどわかるし、最後に会いたい人に会えないとわかった
トリスタンの絶望も痛いほどわかる。

ケルト的で暗くて悲しい感じがよく表れていて
心に残るトリスタンとイズーだった



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