Shigehisa Hashimoto の偏見日記
塵も積もれば・・・かな?|それまで|これから
2002年10月07日(月) |
車寅次郎の生活と意見 |
今日はTV東京で「男はつらいよ」を放送していたのでついつい観てしまいました。そして改めて「やっぱり『こっち派』だな」と痛感してしまいました。自分はこういう人間であると無理にカテゴライズするのも馬鹿馬鹿しい話ですが、それでも向き・不向きはあるもので、映画的嗜好もやっぱり存在するのです。だから逆に「寅さん」が大嫌いで、前衛的な映画が好きな人がいても私は一向に構わないと思っています。
さて今回放送されましたのは第25作、副題を「寅次郎ハイビスカスの花」と言います。マドンナ役が寅さんの最高のパートナーと評された浅岡ルリ子演じる「リリー」なだけあって大変評価の高い一作です。実際映画としての完成度も非常に高いものに仕上がっています。あらすじを簡単にかいつまんで説明してみましょう。寅さんとリリーは異郷の地・沖縄にて3度目の再開を果たし、またしても意気投合します。二人は夫婦同然の生活を始めますがちょっとした気持ちのすれ違いから大げんか。結局寅さんはまたもや振られてしまい、旅に出てしまうのでした・・・と普通の映画、例えば悲恋映画ならばここでポンとエンドマークが入って幕引きとなってもおかしくありません。しかし寅さんは違います。実はここからが真の見どころでもあるのです。ラスト、どこか田舎の山奥のシーンで寅さんはなんとばったりリリーと再会するのです。2人の躍動感の素晴らしさ!この間のギクシャクもどこ吹く風、まるで夫婦漫才の如く朗々とした掛け合いを演じつつ、緑が萌える山中へ賑やかに消えてゆきます。見上げれば雲ひとつない青い空。寅さんの心も同様に晴れ渡り、失恋の痛手からすっかり脱却しています。BGMも主題歌を力強くマーチ調にアレンジして寅さんを応援します。そしてやっと「終」の文字が浮かび上がるのです。
悲しい結末にしようと思えばいくらでも出来ます。しかしあえてそうせず、ジャカジャカジャーンと賑やかに終わらせるところに「男はつらいよ」の真髄があります。男はつらい、けれど心の持ちようをちょっと変えればこんなにも楽しいのだ―これこそ山田洋次が一貫して言いたかったことではないでしょうか。このシリーズは長らくやれマンネリだ、予定調和だと揶揄されてきましたが山田監督は決してめげることはありませんでした。そして大事なのは観客の心を励ますことだ、明日への希望の気持ちを湧かせることだ、という思いを強く持つことで先ほどの鮮やかなラストシ―ンを作り出すことに成功したのです。この思いは受け手にもしっかりと伝わりました。劇場を出た観客の心は清々しく澄み切って「よし、今日からまた頑張ろう!」との決意を新たにし、また日常との格闘に戻る意欲が湧いてくるのです。
ハッピーエンドではないがバッドエンドでもない、言わば「準ハッピーエンド」という表現が最もあてはまるこのラストシーンこそ私が寅さんを支持する一番の理由なのです。
橋本繁久
|