Shigehisa Hashimoto の偏見日記
塵も積もれば・・・かな?それまでこれから


2002年11月03日(日) ”この人の声に酔いたい” Vol.2 小山茉美

概論
小山茉美(こやま・まみ、昔は『小山まみ』という名前であった)代表作:「Dr.スランプ アラレちゃん」則巻アラレ、「魔法のプリンセス ミンキーモモ(第1作)」ミンキーモモ、「戦国魔神ゴーショーグン」レミー島田、他多数。おそらくアイドル声優の先駆けだと思われる。好むと好まざるとに関わらず、後の声優ブームの礎を築いた(声優としてレコードを出したり、ラジオのDJを務めたり、エッセイを出版したりした)感が否めないが、この人の力量なら誰も文句をつけないだろう。まだこの頃は人気に実力が伴っていた幸せな時代であった。
彼女の魅力は単純に声質が良いのもさることながら、どんな役でも嘘のように見事にこなし、なおかつそれぞれの役を全て素晴らしく演じられることが第一にあげられるべきであろう。アラレちゃんのパワフルボイス、モモの少女声、レミー島田や18才モモのお姉さん的ざっくばらんな大人の女性、キシリアや蕗子のような冷徹非情な女、果てはニルスのような少年すら演じることが出来る。キティやコロ助といったキャラクターも抜群。どれも素晴らしいほど完璧に演じている。まさに七色の美声の持ち主である。洋画や海外ドラマにも多数出演しており、古くは「チャーリーズ・エンジェル」やナターシャ・キンスキー、近年ではシャロン・ストーンの吹き替えが有名である。

独断のプレビュー
個人的に一際思い入れの深い人。相当長い文章になると思うので、最初に注意しておく。
小山さんと言えば何はさておきアラレちゃんである。30%超の視聴率を維持した国民的人気アニメのヒロイン・アラレを唯一無二の声で演じきった。あのバイタリティー溢れる声は何に起因しているのか、ちょっと素人では考えが及ばない。「クレヨンしんちゃん」の声マネをできる人はいてもアラレちゃんのマネをできる人は皆無であろう。原作でもパワーの塊であったアラレだが小山さんの声を得て、よりエネルギッシュに、よりパワフルにブラウン管を駆け回ることになる。

リメイク版の「ドクタースランプ」で声優が変わると聞いた時、一体どうなるのか戦々恐々の思いで第一回を見たのだが現れたアラレが単なる幼稚園児のような声でガックリきてしまった。キャスティング担当者は単にアラレが小さい子(それでも13歳のはずだが・・・)という理由だけであの声を選んだのだろうか。溢れ出るアラレのパワーが全く表現できていない。やっぱりアラレちゃんは元気がなきゃね。新アラレが大人しい作品に収まってしまったのはここら辺にも要因があるのだ。

話が少し脱線してしまったが、私は小山さんのアラレちゃんが小さい頃より大好きであった。私が物心ついたときから「Dr.スランプ」は当たり前のように放送されていて、我が家でも当たり前のように見ていたのだがそんな中においてもアラレちゃんの声はとても心に残るものだった。ただし、声優・小山茉美を意識することはなかった。勿論小さかったこともあるのだが、小山さんの場合作品によって声がガラリと変わってしまうので他の作品に小山さんが出ていても「あ、アラレちゃんの声の人だ!」と認識することができなかったからである。

はっきりと小山さんの名前を憶えたのは五年程前のこと。ゲーム「スーパーロボット大戦」に出てくるロボット・ゴーショーグンが気に入ったので原作アニメのほうも見てみようと思い立ったのである。「ゴーショーグン」の面白さはアニメ思い出館の第一回に書いた通り。レミー島田もとても魅力的な女性であった。たおやかな美貌を持ちながらも決して男に媚びたりしない。あけすけとして物怖じしない、本物の大人の女性である。また、その声がとても美しく麗しくて、これをきっかけに私は小山さんのファンになってしまった。それで、他にどんな作品に出ているのか調べてみたのだが、それによって恐ろしいことに気づかされることになる。「え?アラレちゃんと同じ声の人!?」
驚きはこれだけでは収まらなかった。さらに調べていくうちに私は意外と小山さんが出ていた作品を見ていたことがわかった。記憶のうちから古い順にたどってみよう。

まずは「DRAGON BALL」のランチさん。知っての通り彼女は二重人格で、声も大人しい時と凶暴な時とでは全然違うから私はてっきり別々の声優さんが担当しているのかと思っていた。だが、現実には二つとも小山さんが担当していた。それを知った時は私はただただ感心してしまったが、今思えば七色の声を持つ小山さんにとってはこの程度はお茶の子さいさいであり、まさに面目躍如だったのであろう。

次に「あんみつ姫」。私はあんみつ姫が大好きであった。保育園のころ使っていた茶碗が何を隠そうあんみつ姫のプリント入りなのである。とっても可愛らしい声であった。「あまから城あっぱれ音頭」なんかよく歌ったものだ。

「キテレツ大百科」のコロ助も小山さんであった。これも出色の出来。人間じゃないからキャラクターの作り方も難しかっただろうが、独特の抑揚のつけた喋り方で見事に個性を確立してしまった。途中で杉山佳寿子さんに交代してしまったが今年の正月特番でドラマとして復活した際にはまた小山氏に戻っていた。

少し行数を取りすぎたので残りは駆け足気味に紹介しよう。
「おにいさまへ・・・」の宮様は強烈だった。普段は感情を表に出したりはしないが内にはエゴイズムの激情が渦巻いていてその心理のひだを小山氏は上手く表現していた。
再放送で何度も目にしていた「機動戦士ガンダム」のキシリアも凄い。冷徹だが、部下を思いやる一面も持つキシリアはこの人しか演じることは出来まい。それにしてもアラレちゃんと同じ声の人とは思えない程の違いである。
同じく再放送で見ていた「キャンディ・キャンディ」のアニ―もこの人。今となっては幻しの作品になってしまい残念である。
友達が好きなせいでつられて見てしまった「シティ・ハンター」の美樹も小山さん。「聖闘士星矢」のシャイナも小山さん。「ワンダービート・スクランブル」のリー隊長も小山さん。これ以外にも、私の見ていた作品に小山さんはたくさん出ていた。80年代は私もアニメ(と言うかテレビ全般)を見まくっていたのでかなりの確率でバッティングしているのである。

映画・特番関係でも活躍は目立つ。手塚治虫が存命の頃、日本テレビの「24時間テレビ」で毎回放送されていた手塚アニメに小山さんは常連のごとく出演していた。私がよくみる「伊勢湾台風物語」のヒロイン・津島ひかりも彼女があてていた。また「ゴーショーグン」のOVA版「時の異邦人」での迫真の演技は特筆ものだ。小山氏がやっていたからこそあの作品は間が持ったに違いない。「ドラえもん のび太の魔界大冒険」の美夜子も良かった。
異色なところではキャストを一新した「ルパン3世」のOVA「風魔一族の陰謀」での峰不二子を挙げることが出来るだろう。増山江威子さんのデフォルメされた圧倒的な色気とは違う、現実的な生の妖しさを持った不二子を好演していた。他にも「幻魔大戦」「カムイの剣」「AKIRA」などでも主役級を務めている(私はまだ未視聴であるが)。

洋画の吹き替えも非常に多い。私はナスターシャ・キンスキーやキム・ベイジンガ―のころはあまり知らないが近年の作品なら割に見ている。シャロン・ストーンの吹き替えなんかイロっぽいを通り越してエロっぽい領域にまで到達している(笑)。重ねて言うがアラレちゃんと同じ声の人とは思えない。

ここまで長々と書いてきたがまだまだ私の見ていない作品が多々あり、現在掘り起こして鑑賞中である。長年レンタルビデオ屋を探し歩いても見つからなかった「魔法のプリンセス ミンキーモモ」が8月よりBSデジタルで再放送され、やっと私も見ることが出来た。この作品は本当に素晴らしい。まだ全話を見たわけではないが、傑作の称号を戴くにふさわしいと個人的に考えている。小山さん自身がが歌うOP・EDも感情表現がとても上手く突出している。また、私の住んでいる東海地区では「二ルスのふしぎな旅」の放映が始まっており、こちらの方でも小山さんの素晴らしさを十二分に堪能することが出来る。楽しみはまだ尽きることはなさそうだ。

演じて良し、歌って良し、書いて良し(実はエッセイや対談集のほかに脚本も一度だけ書いている)の小山さん。その麗しい声はまだまだ現役である。これからもその見事な演じ分けによる妙味を期待しつつ、この項を閉じるとしたい。


橋本繁久

My追加