Shigehisa Hashimoto の偏見日記
塵も積もれば・・・かな?それまでこれから


2003年03月04日(火) ツッコミ禁止?

(2003年 2月29日付)
人気漫才コンビ「中川家」の弟、中川礼二氏が、広島市内のバーで女性の頭をたたいたとして、広島県警広島中央署から暴行容疑で任意で事情聴取、活動を当面休止することになった。礼二氏は問題の”頭叩き”を「あれはツッコミ」と弁明しているが、芸の世界での常識は一般人には通用しなかったようだ。

だが、事件はこれで終わらない。日本という国の怖いところはこの後だ。ツッコミ=痛いの概念にのって、なんと反暴力団体を自称するAVPP(Anti Violence Protect People の略)なる集団が現れ、漫才における「ツッコミ」は極めて暴力的で、青少年の精神に多大な悪影響を及ぼすとして「ツッコミ排斥運動」を展開し始めたのだ。私が調べる限り、AVPPは善良なる一般市民に難癖をつけてお金を脅し取る悪徳団体だが、折りからの風潮を受け世論もAVPPに同調、「ツッコミは即刻辞めるべきだ」という声が続出している。

強力な味方を得たAVPPはその邪悪な刃の矛先を1人の男に突きつけた。「ダウンタウン」の浜田雅功氏である。AVPPは「浜田氏が松本氏をツッコム時の頭のはたき方には悪意が感じられ、非常に反社会的で見るに耐えかねる」と主張、浜田氏にタレント活動の廃業と浜田氏のツッコミによって精神的苦痛を受けたとされる人4896人に対して総額8億5502万円の損害賠償を要求していると言う。現在、浜田氏は外を歩くと市民から生卵をぶつけられるため、家から一歩も出られない状態だ。AVPPはこれを民事事件として正式に裁判所に申し立てることを決めた。

AVPPの一連の行動に、”ツッコミ”の同業者も多大なショックを受けている。ナインティナインの矢部浩之氏は、自身がレギュラー出演するラジオ番組で「ボクはツッコム時も相手(岡村氏)の頭頂部をなで上げる程度にします」とマイルド派への転向を早々と宣言。またウッチャンナンチャンやよいこなどのどちらがツッコミかわからないコンビは、お互いに「お前がツッコミだ」と責任をなすりつけあう状態に陥ってるという。ロンドンブーツにいたってはこの件に関する不和によって、近くコンビ解消を発表する予定らしい。この他にもツッコミ廃止の運動によって大量の「お笑いリストラ芸人」が発生する見込みだ。

以上のように今、お笑い界は悪質な団体によって大いに揺れている。だが、考えてみてほしい。もし漫才において「ツッコミ」がなくなったらどれだけつまらなくなるか。カレーのルーがかかってないカレーライスを食べろと言ってるのと同じなのではないか。あるいはアクセルのない自動車で高速道路を走ること、トイレットペーパーのない公衆トイレに入ること、筆記用具を持たないで大学受験すること、またはスピーカーが存在しないステレオ、給料日のない仕事、チョコを一個ももらえないバレンタイン、手をつながないデートと同じぐらい意味のないことではないだろうか。「ツッコミの迫害」はしばらく収まりそうにないが、せめてこの記事を読んだ人は安易な世論の風潮に流されないでほしいと切に願っている。

ジャーナリスト 洞野蕗介
※編集部注・この記事がどこまで真実かはわかりません


橋本繁久

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