Shigehisa Hashimoto の偏見日記
塵も積もれば・・・かな?それまでこれから


2003年03月10日(月) くどいかもしれないがテレビの話をしよう

少年探偵団

★大胆不適な脚本家の参戦

主題歌が「ぼ・ぼ・ぼくらは・・・」でないほうの作品。長坂秀佳がからんでいるとは知らなかった。どうも一般的な東映子供向けドラマとは印象が違うと思っていたが、これで合点がいくというもの。長坂氏は我々TVゲーム世代としてはサウンドノベルの「弟切草」や「街」、あるいはそれとリンクしたドラマ「透明少女エア」などを手掛けた人物として広く知られているが、「キカイダー」や「キカイダー01」、そして「快傑ズバット」のライターとして特撮ファンの間でも超有名な人である(あるいは『特捜最前線』などで一般視聴者にもその名は知れ渡っている)。この起用は個人的には歓迎したい。
そして音楽は菊池俊輔。こちらはやっぱりというかなるほどというか、王道的な登板だ。それにしても菊池氏は一体何本のレギュラーを持っていたのだろう。こなした量だけをみれば尋常じゃないことは確かだ。勿論、質的にも良いものが多いけど。

スタッフに関する記述が多くなってしまった。肝心の作品の感想だが、やはり二十面相役が団時朗なのがうれしい。でてきた当初はいかにも「青春二枚目路線」という感じであったが、この頃になると憎ったらしい演技が特に光るようになっている。これで演技の方向性が固まったのか、現在にいたるまで悪役の名優として名をはせているのだから、「少年探偵団」のころは役者としてちょうど転機を迎えた頃だったのだろう。この団氏の演技だけでもこの作品を見る価値は充分あるといえる。


日本アカデミー賞授賞式

★「たそがれ」旋風巻き起こる!

毎年密かに楽しみにしているイベント。と言っても誰々が何々の賞を取ったとか、そういうことに興味があるわけではない。毎回見ているのは、3月というとかくセンチメンタルになりやすい時期に、日本映画界の一応”一流”と呼ばれる役者達がただっ広い会場に厳然と集うというなんとも言えないエセゴージャスさをたっぷり堪能したいからである。ただ、今回に限ってはそういう理由のみではなかった。無論、去年日本映画界で大喝采を浴びた「たそがれ清兵衛」がどこまで票を伸ばすか、ということにも大きな関心があったからである。やはり「たそがれ」は強かった。それも予想をはるかにこえて。俳優部門では助演女優賞をのぞく全ての賞で最優秀賞を受賞(受賞者は真田、宮沢、田中)。そして最優秀監督賞、最優秀作品賞も当然の如く取った。その他の細かな賞(全部は拾いきれん、失敬)も併せると総計12冠であったらしい。凄い。ただただ凄い。これで山田洋次を毛嫌いする人間に強烈なカウンター・パンチを浴びせられたと思うとなかなか爽快である。

ただ、この快挙も手放しで喜ぶべきかというとはなはだ疑問ではある。「たそがれ」は確かに日本映画の歴史に名を残すべき作品である。しかしほとんど総なめに近い受賞は、他作品に「たそがれ」に拮抗するクオリティを持つ作品が全くなかったことの裏返しに他ならない。「たそがれ」の栄光も映画界全体の視点から見るとやや憂鬱だ。やはり日本映画は衰退していくより道はないのか・・・・

それにしても賞の合間にしつこく登場したみのもんたのいい加減なコメントには腹が立った。昔は福沢朗と市川森一のコンビだったのに、いつから変わってしまったのだろう。前のほうがよっぽど良かった。


007 ユア・アイズ・オンリー

★アクションは007の王道

アクション、アクション、またアクション。そして爆破だらけ。これぞ007の王道なのだろうがそれにしても展開が速すぎて目がまわる。エピソードで劇を引っぱっていくのではなく、アクションとアクションの間にサブ・ストーリーが幾つも挿入されている感じ。娯楽映画にはとかくありがちだが、それを差し引いても総じてドラマ性の希薄さが印象に残った(良い悪いの問題ではない)。

しかし”ウリ”のアクションに目を向ければ、やはり流石、と息を呑む。特にボブスレーまで使った雪上の追撃戦は予算もふんだんに組んであると見え、無類のスピード感と迫力に満ちたものになっている。やはりアクションに主眼をおくことが007の正しい観方なのだ。


シャーロック・ホームズの冒険 「赤い輪」

★ホームズ・アット・インターナショナル

今まで見た作品の中で最もややこしい話だった(前後編は除く)。今回に限らず、このシリーズは画面に現れる情報量が極めて多いため、随時、頭の中でスジを処理しながら見続けるにはなかなか集中力がいるのだが、本作はいつにも増してその傾向が強かった。

また、今回の話はスケールが大きいことでも特筆されるだろう。なにしろ、登場人物のバック・ボーンが相当複雑に入り組んでいるのだ。イタリア人夫妻のゲスト、請け入れるロンドンのこれまたイタリア人、下宿所の夫婦、秘密結社の暗躍、ニューヨークからやってきた刑事、そして英米警察の顔合わせとやたらと国際色が強い設定が目に付く。この措置はシリーズがマンネリに陥らないよう、新たなモチーフを追い求めてのことなのかもしれない。もしその仮定が当てはまるのなら、意図の是非は別として、結果たるやなかなかのものであった。

ただ、肝心のホームズの活躍があまりなかったのは残念。結末が一応のハッピーエンドを迎えたのもあくまで偶然の産物であり、ホームズの名推理が導き出した結果ではない。それだけが本作の芳しくない点である。


橋本繁久

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