Shigehisa Hashimoto の偏見日記
塵も積もれば・・・かな?|それまで|これから
2003年11月12日(水) |
評論の自由とは言うものの |
漫画夜話の司会進行役でおなじみの民俗学者・大月隆寛が今月出版された社会評論系のとある雑誌でかなり過激なことを書いている。いわゆる東大批判の一種のようなものだが、その負のエネルギーの傾け具合が凄まじい。東大出身のO氏を槍玉に挙げて、「執筆者の顔をその著作物に乗せるな」だの「自意識過剰なカメラ目線で『俺って他の東大出とは違うんだぜ〜』とアピールする浅はかさ」だの「どうせこいつは東大の優等生の僕ちゃんだから食いっぱぐれることのない安全地帯で安穏と出来て良いね〜」だの噛み付き方がいちいち卑屈なまでに壮絶なのである(上記のカッコ書きは私がまとめた大意である。大月氏本人の記述とは言い回し等多少の違いがあるだろうが大筋では相違ないことを付記しておく)。 このO氏という人物も確かに自己陶酔型の勘違い人間に見えなくもないが、この手のナルシストは世の中に吐いて捨てるぐらいいるわけであって(例えば私もそうである・・・多分)何もこの人に限って集中放火する必然性は感じられないように思う。東大批判の論文と考えてもいささか非建設的な論理の度合いが過ぎ(じゃあ自分はどうなんだ、という最も根本的な言い返しも含む)、尚且つ使っている単語が激しく荒々しく攻撃的で、どうも平常心を欠いているきらいがある。大月は単に高学歴の人に対するヒガミとコンプレックスをくどくどと述べたかっただけではないかと感じたほどだ。何が彼をこんな評論を書くように駆り立てたのか不思議でしょうがない。 思えば、私が初めて彼の論文を読んだのは5〜6年前の中日新聞に載っていた、「柳田國男の世界からの脱却を試みる」という趣旨のものだったが、なかなか鋭い考察と洗練された筆致に感心したものである。また、テレビで見る彼はいつもどっしりと落ち着いていてとてもあのようなヤケッパチで突っ込んでいく文章を書く人間には見えない。それなのに今度の愚挙は一体どうしたことだろう。私が大月の本性を知らないだけの話なのかもしれないが、どちらにしろ少しがっかりしてしまった。
橋本繁久
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