昨日も今日も編み修行 ちょっと慣れてきたら 絞めが足りず弛んでいるものがあって そのポイントに注意しながらのいちにち それでもピッチはさらに早まった さすがに 怠け者がいきなりこんなに働いて 終わる頃には首が上がらない状態
それを 師匠の佐藤さんは 6時過ぎまでやって 食事とお風呂を済ませてから また2時間 その後テレビを見ながら 30分ぐらい別の作業をするのだそう
昔は呉服屋をやっていたと奥さん 佐藤さんの親の代からの仕事を辞めて 途中からかばん業を始めたそうだ それで3人の子どもを育て 自分達が住んでる家の他にあと2軒 家を持っているのだと言う
身体を壊してから 座り仕事はできないという奥さんは 昔は和裁に洋裁に編物 今は詩吟に踊りと なんだか多趣味のひとで お昼休みなんかにちょいちょいわたしを呼んでは そんな片鱗を披露してくれた
若い頃に頑張ったらいいことがあるから と奥さん わたしがいっとき頑張れたとしても 未だに身体を粉にして 毎日同じ作業を続ける佐藤さんには どう頑張っても及ばない
ちょうどうちの父も同世代 まるで機械みたいに身体を使って 安い工賃で働いてきた もしわたしが継いだなら きっとどこかで 下請けのままじゃない道を 模索したに違いない
言うほど簡単ではないにしろ この時代だからこそ 別の価値観で生きることが可能だと思う しょせんわたしはわたしでしかなく わたしなりの頑張り方で やっていくしかなかったろう
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