昨日書けなかったお話し 友人に付き合って家探しのその後 一発目であっさり決まるかと思えたが 連絡の行き違いで 既に大家が賃借人を決めてしまっていた
他に目ぼしい物件もなく とりあえず一度外側からだけ見た家を 見せてもらえることになった由 それが中の印象は大違いで 先に決めた家より 遥かに良かったというのだった
けれど気に入ったとしても その分家賃は高く しかも既に他の人が 何やら大家と交渉中とあって ほとんど見込みはなさそうに思えた
その後の連絡もないまま 他に新しい物件がないかと 昨日の夕方一緒に不動産屋へ行った するとカウンターの女性が顔を見るなり あの物件キャンセルになりました と言うのだ
雨が降る中 暗いだろうと言われつつ見に行くと 電気が点かない家の中はさっぱりとあかるく 台所を除いて全て和室の部屋は 昔ながらのしつらえが施され そこに居るだけで別世界の様相だった
あかりとりの障子の細工や縁側の雰囲気 中庭と言われて意味が解らなかった 三方を家と塀に囲まれひっそりと隠れた庭 階段を上り終えたところの木の手すりと電球の傘 その一方で水廻りは清潔で新しく 和室をすっきり使うための収納もたっぷり
もちろん気になる箇所もあったが それを補って余りある 洒脱という言葉が相応しい佇まい いっときそこに身を置いただけなのに 清まった場所に詣でた後のように 何か新しいものが満ちてくるのを感じる 雨に洗われた庭を見ているだけで ゆるぎないひと筋が 背骨を伝わって天と地に延びてゆく
たぶんこの家は待っていたのだ 落ちた外壁の中にある 土と木と藁で固めた箇所すらも きちんと建てられた証拠として晒しながら きっとそれを解ってくれる住人を 小さな偶然の重なりは そう思うよりない結末を見せてくれそうだった
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