次の展示会もそうだが 古物中心のコンセプトは そういうものが好きで やたら集めている知人がいるからこそだった 集まりすぎて置く場所もなく わくわく館のひと部屋を借りたい とまで言っていた
前回の展示会で 安く売りすぎて後悔したのか もう出せるものがないとその知人が言い出した お客さんは楽しみにしているし 本人だって4月でもいいと勢い込んでいたのを 準備に時間を掛けるために 先延ばしにしたのにだ
その時に本人から 体調が悪いと聞いていたのだが それから知り合いの霊能者に見てもらったところ 集めた古いものに悪い霊がついているせいと 言われてしまったのだそう だから次回の分は 泥を被ったままの 汚い小さな戸だか欄間だかしかないし もう集めるのは止めると言う
ざけんなよと咄嗟に思った 人づてに聞いたから どんなニュアンスだったのかは知らないが 古物に何が憑いてようが 全ては自分次第じゃないか 集めるだけ集めておいて 保存はともかく隙間だらけの小屋に突っ込んだまま しかもその中に値打ちものがあっても気付かない それじゃあ折角のモノが泣くってもんだ
値打ちがあればあるほど モノだってそれに相応しい扱いを してくれる人の所に集まるはず 霊云々じゃなく ただそれを作った人のことだけを考えても 愛でて愛でて大切に使ってあげてこそ 手を掛けて技術を尽くした仕事が報われる そういう仕事が見えるからこそ 私たちは古物に惹かれるのだ
それがこんなことで止められるなら そもそも何にも解ってなかったってことだ あまりにも腹が立ちすぎてくらくらした それからふと思った ひょっとしてこれで ないはずの売り物が ごっそり出て来るのかもしれない だって霊が憑いてるんだもん 処分するしかないだろうきっと
しょせんモノはモノでしかない それを良くするのも悪くするのも 死んだ人じゃなく 今生きているわたしたちなのだ きちんと曇りのない眼で見ることができたら そこからは恩恵だけがやってくる 何よりも浄化すべきなのは いわれのない怖れを呼び込むこころだ
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