武ニュースDiary

* このサイトはリンクフリーです。ご連絡はいりません。(下さっても結構です。^_^)
* 引用は、引用であるとわかる書き方なら、必ずしも引用元(ココ)を表示しなくても構いません。
* 携帯からのアドレスは、http://www.enpitu.ne.jp/m/v?id=23473 です。
* 下の検索窓(目次ページにもあり)からキーワードでDiaryの全記事が検索できます。
* バナーは世己さんから頂きました。
* Se inter ni estus samideanoj, kontaktu al mi. Mi elkore atendas vin, antauxdankon!
目次|前の記事|新しい日記
2020年05月06日(水) |
「ELLE MEN 叡士」2017年4月号・4(完) |
人間は複雑だから素晴らしい、また残念でもある
仔細に見ると、金城武の顔には避けられぬ歳月の痕跡が認められる。 が、彼は少しも避けようと思っていない。 撮影の時も素顔のままで、現在の真実をさらしている。
2000年に日本のテレビ局が制作した「金城武 南極潜心」という ドキュメンタリーの中でも、同じように真実な彼が見られる。 寒い、雪に覆われた南極で、彼は地面に腹ばいになり、 匍匐前進しながらアザラシを観察する、 雪を口に含み、アザラシの気持ちをわかろうとする。 澄んだ、氷のように冷たい南極の海に潜り、氷山に頭突きをして 氷のかけらを手に入れ、ウィスキーに入れる。
アザラシの死体を見た彼は長い沈黙の後、呟いた。 「自分の身近で生きているものが急に死んじゃったときは、 何かメッセージがあるなと思う。 死ぬんだよ、そのうち。 そのうちというか、いつでも死んじゃうよ、命は、って」
南極を去る前、彼は一羽のペンギンを見て感慨を洩らした。 「あのペンギン、ひとりぼっちだ。 ぼくと似てるね、ぼくもいつもひとりだから」
「あの頃は共感するものがあったんでしょうね」 17年後、南極行きは気持ちの楽な旅だったと金城武は振り返る。 「番組をやってるのときの気持ちじゃなく、あの年齢の一瞬の真実だった。 スクリーンの中の役とは違う」
大自然に対する興味、動物好きをこのドキュメンタリーで、 彼は余すところなく見せている。 だが、深い反省もあり、思いつくまま口に出すことに用心深くなる。 「ぼくは動物が好きだけど、肉も食べる、矛盾している」
2014年に台湾で取材を受けた「天下雑誌」で、 彼は自身の成長と歳月について、こう語っている。 「歳月を重ねるほど、たくさんのことに出合います。 ぼくの年齢になると、おじさんやおばさんといった人たちが 亡くなるということも出てくる。 人生の様々なことは、しっかりと経験していかなくちゃ。 それで初めて本当に感じ取ることができると思う」
人生の究極のテーマに話が及ぶと、彼は、ずっと考えてきたと言った。 「ただ、若いときほど積極的には考えませんね。 ぼくらは老子のような聖人、あるいは宗教の言っていることに触れるしかない。 でも、今でも答えは見つからない。 ぼくの人生経験では、まだ『人生とはこうだ』と言えないんでしょう。 今、人々の生活はとても忙しい。 考えなきゃならないことがいっぱいあって、みんな考える機会がない。 それでも、いつか、なぜもっと早く考えておかなかったんだろうと 思うときが来るんでしょうね」
彼は哲学書を読む。 「たくさんじゃないですよ、軽いものばかりです。マンガから入ったのかな」 彼は宗教に興味があるが、より惹かれるのは宗教の背景となっている学問だ。 「人間を見ると、複雑だなあと思うかもしれませんね。 でも人が素晴らしいのは複雑だから、選ぶから、考えるから、 過去と未来があるからなんだと思います。 そこが人の素晴らしいところだけど、同時に困ったところでもある」 こういう話をしているときの金城武は、軽く腕を組み、 ゆっくりと話し、温かい笑みを浮かべている。
北京の混沌とした冬の午後、撮影は3時間に及んだ。 合間の時間、彼は広々とした居間の中央をぶらぶらと歩いていたが、 不意にグランドピアノのところへ行くと、腰を下ろし、探るように鍵盤に触れた。 指は、初めは慎重に、だんだんと活発に動き出し、ピアノの音が居間中に響き渡る。 スタッフは相変わらず忙しく行ったり来たりし、あちこちで雑音がし始めた。 彼のピアノは、この忙しい風景の中にあって、落ち着いて、軽快で、 周りを邪魔しないものだった。
以前、ある番組で、彼はこう言ったことがある。 あまり外出はしない、でも変装もしないと。 「隠れているわけじゃなくて、ぼくがいることを気付かれたくないんです」 (完)

これでおしまいです。 少しお休みして、また他の記事を探してみます。
BBS ネタバレDiary 23:30
|