武ニュースDiary


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2020年05月22日(金) 「智族GQ」2016年12月号「トニー・レオンと金城武」・2

怖がらないで、真剣なだけだから

城武が前回、喜劇に登場したのは、20年前の朱延平の映画まで遡る。
「チャイナ・ドラゴン」では、車を運転しながら美女に見とれて木に衝突、
タイヤは外れ、カメラは彼が鼻血を出して
へらへら笑っている顔をクローズアップする。
「危険な天使たち」では学生に化けた潜入捜査官を演じ、
教室で,絵に描いた眼を貼り付けて居眠りをし、
当時の観客たちを笑わせていた。

それから時間があまりに経ったので、観客はスクリーンの中の、
愁いに満ちた情の深い彼に慣れてしまい、
あの喜劇俳優金城武を思い出す人はほとんどいないというだけだ。

「どうしてこういうのに出て、ああいうのはやらないのかと、よく聞かれます。
そうじゃなく、人が、これをやりませんか、と言ってくるだけなんだと
答えるんですけど」
本当は、ずっとコメディが大好きなのだと言う。

個人的に映画界の風潮を推測してみると、
「最近手にする脚本はこういうタイプのものだが、
10年前、15年前から見てくると、
数年に1度の割で変化があるようだ」と、
大体こういうことではないだろうか。

彼も、冗談だが、道具や衣装を1回しか使わないのはもったいないので、
ある時期同じようなタイプの脚本を繰り返し書くんじゃないかと、
ひそかに考えたことがあると言う。

俳優がどんな役とめぐりあえるかは、業界の環境による。
幸いここ数年、コメディが再び歓迎されるようになった。

もちろん、金城武が「擺渡人」への出演を決めた第一の理由は、
やはりウォン・カーウァイである。
「恋する惑星」で、映画が好きになった。
香港で、夜、撮影機器をかついぎ街中を無許可撮影して回ったあの日々、
ウォン・カーウァイが映画の面白さを見せてくれた。
さらに、張嘉佳の小説にも心を動かされた。
「この2人がいて、断る理由はないでしょう?」

しかし実は、ぐずぐずためらっていることもあった。
「また同じことの繰り返しになるのだろうか?」
ウォン・カーウァイは、彼のこのような心配なんか気にしなかった。
絶対、同じになどならないと思っていたからである。

確かに、今回は以前とは違っていた。
カーウァイの世界に脚本はない。
当時21歳になったばかりの金城武は、しかし、こう考えることができた。
「何でもやるよ、簡単さ。やればいい。
どうせあの人が何をしているかなんてわからないんだもの」

一方「擺渡人」はある小説を原作としている――
役の理解に影響しないよう、撮影開始前から、
小説はあまり読まないようにとわざわざ言い含められてはいたとはいえ。
金城武はそれでも前もって酒場に足を運んでは、
管春の感じを探ろうとし、脚本を読みたいと言った。

「でも、そんなこと言っても無駄な話なんだよね、
読んでも読まなくても役に立たないんだもの。
あの人のやり方は知っているのだし、
自分もそのやり方が実は好きなんだから、
現場に行って、撮影に入り、やってみるしかないわけだ」

しかし、今回は脚本は存在するので、現場で新しいアイディアが出ると、
カーウァイと張嘉佳はよく意見を交換していた。
次のシーンを考え着くと、涙を流して笑いながら、金城武を呼んで、
聞かせることもあった。
そうしてやっと、
「どんな具合か、ちょっとやってみてもらおう」ということになる。
特別真面目な俳優として、金城武も思いついたことがあると、
まずは2人の意見を求めた。
「管春はこういうふうでいいですか?」

俳優というこの道を長いこと歩んできた金城武は、
かつての何もわからぬ状態を繰り返すことはない。
今は、演技に入る前、役の人物の1つ1つの行動が成立すると、
必ず納得ししなくてはならない。

この真面目さのせいで、張嘉佳が制作発表会の席上、
まだ恐怖冷めやらぬ風情でこう話したほどだ。
「出演者は大勢いますが、一番怖いのは彼ですよ。
毎日、大きな目でこちらを見つめて、なぜこうなんですか、と聞いてくるんです。
後になって、ある日、ぼくのところに駆けてきて、言いましたよ、
『怖がらないで下さい、ぼくはただ一生懸命やってるだけですから』と」
(続く)





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