にゃんことごはん
ごはん



 ああ、こんなところにいたんだね、と呟く午後

今年の冬は寒い。私が年を取って寒さに敏感になったのかと思っていたが、宅配便のお兄ちゃんも酒屋のお姉ちゃんも「今年は寒い」と言うので、やっぱり寒いのだと思う。

年末の大掃除のとき、気になりつつタイムアウトで放置したなかに、一人用やぐら炬燵がある。リュウの愛用品で、彼は冬の間中、座椅子に寝転がったりダイニングの椅子に座ったりしつつ、やぐら炬燵にケットをかけた簡易炬燵でぬくぬくしている。ついでにニャンも一緒になってぬくぬくしている。
わずか100wほどの電気消費なので省エネなことこの上なく、小さいだけあってでかい炬燵よりもよほど機動性にすぐれている。
数年前、炬燵布団がおしっこ攻撃に遭い、どうしようもなくて処分して以来、通常の炬燵代わりに大活躍している逸品だ。

だが難点もあって、熱源(通常だと炬燵のテーブル部分にセットされているもの)が下にあり、そこにホコリがたまる。こまめに掃除機で掃除はするものの、いまひとつきれいにならない。下にセットされている熱源を覆うように小型のヤグラが組まれているため、掃除機のノズルを差し込むのに限界がある。

ところが、このところその木枠のヤグラが外れるようになった。ヤグラを組んでいた木を固定していた接着剤が、リュウの足の重みやら上にのっかるニャンの重みではがれたのだ。外れたところでまた組み立てればいいだけの話で、多少グラグラするが使用に問題はない。
で、今日、邪魔な木枠がなくなった熱源(といっても、保護カバーがかかっていて、こちらはおいそれとははずせない)付近にたまったホコリを、焼き鳥用の竹串を使ってかきだすことにした。気温は低いが日当たりのいい窓辺はポカポカと暖かい。なんとなく鼻歌まじりの作業になる。

そうしたところが、まあ、出てくる出てくる。その9割は猫の毛だ。
掃除機のゴミをつぶさに見ると半分ぐらいは猫の毛で、ゴミ、ほこりの類より多いものだが、狭い隙間に入り込んで留まる力はホコリの類より猫の毛のほうが強力らしい、などと、アホなことを考える。掃除機ゴミのなかでも意外と多い髪の毛は、こういう隙間に入り込んでいないのも発見だった。

戦利品(?)の猫の毛玉(プラスα)をまとめていて、ふと気付いた。ねずみ色やら黒やらこげ茶やらの毛玉のなかに、ひときわ明るい赤茶色の毛がある。
ああ、これ……と思った途端、ルノアールの油絵を思い出させるジュリナの明るいサビ色の毛並みが浮かんだ。画家がさまざまな色彩を組み合わせて、ひとつの色を作り出すように、ジュリナの毛にはごくごく淡いベージュからオレンジ色、茶色と複雑な色が含まれていた。
キジ白のニャンやキジのキラも茶系の毛を持っているけれど、こんなふうに赤みがかった色の毛はない。これは、ジュリナの毛だ……と思った途端、涙が溢れた。

ああ、こんなとこにいたんだね。

よく考えるとおかしなセリフなのだが、そんな言葉が浮かんできた。

ポッポはジュリナと再会したのだろうか?
我が家で過ごした日々は、彼らにとって幸せな時間だったのだろうか?
……かれらは、満ちたりてその生を終えたのだろうか?

私は、自分の人生についておおむね満足している。こんなものでしょ、という諦めでもなければ、この程度が分相応というのでもない。けっこう好きにやって、いろいろあって大変だったこともあるけれど、収支決算したら上出来なんじゃない、という感じ。まだ終わっていないから、この先、収支がどう変わるかはわからないけれど、でもたぶん赤字にはならないだろうな、とは思う(というか、意地でも赤字にはしないというか)。

でも、といつも自問する。自分がその生の一端に責を追うべきものたちは?たとえば、子ども、たとえば、猫。
自分の生を私の手に(一時期であれ)委ねたものたちは?
私に委ねなければ、生きていくこともおぼつかない時期のあったものたちは?

およそきまぐれで気分屋の私につきあうのは大変だろうな、と思う。
それらを相殺して余りあるものが、果たしてあるのだろうか?
今現在の進行形被害者であるリュウやほかの猫たちに対しては、何か大逆転の機会もあるやもしれないけれど(特にリュウは人間だから、自分の手で切り開く道がある)。いなくなってしまったものに対しては、もうどうすることもできない。

ねえ、ジュリ、ポチ。あんたたちは幸せだった?

それは、「うん」という答を期待しての問いでもなく、かといって「きっとノーだろうな」と自分を責めるためのものでもない。ただ……そう、ただ、懐かしく呼びかけるとき、なぜか、そういう問いかけになってしまう。

今でも思い出す。
我が家へ来た当初、私の足音にさえ怯えて、大きな身体をあわてて隠すようにしたジュリナやポッポのことを。
私ができたことなど、ほんとうに小さなことでしなかったと、改めて思う。
ほんとにほんとに、小さなことなのだ。そんな小さなことで、ポッポは甘ったれの赤ちゃん、ジュリナは姫になってくれた……。

私にできたちっぽけなことに、彼らがくれたものが、どれほど大きかったことか。

でも、もし。猫にも生まれ変わりがあるのだったら。
今度は、生まれた家で死ぬまで可愛がってもらえる猫に生まれ変わってほしい。

◆お節は2日でなくなったお正月。あとは、いつもどおりの飯炊き婆の日々。
 
3日
* 朝:おにぎり大3個(大根菜、明太子、塩)、味噌汁(鶏肉、里芋、にんじん、かぶ、大根)、ほうれん草入り玉子焼き
* 昼:サッカークラブのイベントにて(焼きソバ、焼き鳥ほか)
* 夜:ラム肉ローストwithオレンジソース ブロッコリーとカリフラワーとにんじんのバターソテー 春雨と白菜のクリームスープ(たまねぎ、鶏肉)、納豆
* 間食:餅(3個)、バナナ、チーズケーキ1個、カップめん

4日
* 朝:ドリア(トリ、たまねぎ、にんじん、セリ、牛乳、みそ、チーズ)、玉子焼き
* 昼:あんかけカタ焼きそば(豚肉、たまねぎ、ピーマン、にんじん、たけのこ)
* 夜:鶏手羽塩焼き、おでん(大根、こんにゃく、すじ、ちくわぶ、さつまあげ、いか天、ごぼう天、はんぺん、ちくわ)、ごはん(+発芽玄米)、蕪菜の漬物、納豆
* 他:ポテトチップス、バナナ2本、大福4個、牛乳+プロテイン

5日
* 朝:炒めビーフン(ネギ、ピーマン、にんじん、豚肉、ごぼう)、にしんの煮付け、塩握り(ノリ)
* 昼(弁当):サンドイッチ:ローストポークとレタス、ほうれん草入り卵焼きとチーズ、チーズ
* 夜:石狩風鍋(鮭、豆腐、白菜、しらたき、里芋、まいたけ、小松菜)、ごはん(+発芽玄米)
* 他:米菓、バナナ2本、牛乳+プロテイン

6日
* 朝:お握り(梅、いくら、塩)、焼き豚とほんれんそう痛め、卵スープ(たまねぎ、にんじん)
* 昼(弁当):サンドイッチ:蒸し鶏とチーズとベビーリーフ、スモークサーモントレタス
* 夜−クリームシチュー(トリ、白菜、エリンギ、たまねぎ、蕪、蕪葉)
* 他−ポテトチップス、チョコレートスナック

7日
* 朝:七草うどん、梅にぎり1個、卵スープ
* 昼:サンドイッチ 卵とほうれん草とチーズ。豚肉とレタスとマスタード
* 夜:麻婆春雨(牛ひき肉、ネギ、しいたけ、きくらげ、たけのこ、ピーマン)、鶏肉と野菜炒め(レンコン、にんじん、ピーマン)
* ポテトチップス










2006年01月08日(日)
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