最近の一連の田中真紀子外相の発言をめぐる混乱の要因は、
一重に、不用意な発言を他国の外相との会談の席でなした
真紀子外相にあると言ってよいでしょう。
外相は内閣の一員であり、国の外交政策の指針は
任命権者である首相にあります。
その意向を離れて外相が勝手に他国の代表に
個人的見解を述べるなど越権であり、
外相になったら全部自分の思い通りにやれると
いささか勘違いしている部分がなきにしもあらずです。
尤も、確かに田中外相の見解には見るべき点はあります。
特に日米安保依存体質からの転換などは大いに考えるべき問題です。
また、他国の外相と率直に自由な意見交換をする事も必要かもしれません。
そこでの発言がいちいち捉えられて外部に発表されていては、
国際的に日本外交の信頼性は失墜する事でしょう。
だから醜いのは、機密費問題に関して外務省の体質改革を図ろうとする
真紀子外相を忌避し、その追い落としのために利用している外務官僚のあり方です。
理由はどうあれ、外相を追い落とすために他国の外相との会談での発言について外部にリークして利用するなど、
省益のために国益を損なう、まるで売国奴です。
外務官僚の体質がここまでヒドイとは思いませんでした。
真紀子舌禍問題で外交が停滞する云々との批判も尤もですが、
しかし自己保身と省益優先の程度の狭い視野の外務官僚たちの行う外交など、
滞りなく進んでも必ずしも国益には結びつくかどうか怪しいものです。
その意味では田中外相が外務省を掻き回し、
問題の本質をあぶり出したトリックスターとしての役割の
功績は認められてよいかもしれません。
尤も本人には自分がトリックスターであると言う自覚はないでしょうが。