もう過ぎてしまいましたが、
この19日は桜桃忌、つまり太宰治の命日でした。
私は10代の頃、いくつか太宰の作品を読みましたが、
非常にいやらしい根性の奴だと思って、大嫌いでした。
何がいやらしいかというと、、、
例えば太宰には、田中英光という弟子がいたのですが、
彼はボートの選手としてオリンピックまで出たような、
肉体的に健全な、非常な筋肉マンでした。
ところが田中は太宰にかぶれた結果、
自分が文学的に弱いのは肉体的に強いせいだと勘違いして悩んだ挙句、
太宰の命日に墓の前で自殺して死んでしまいました。
つまり弱者が強者に取り憑いて、取り殺してしまったわけです。
これは別に太宰に限った話ではないけれど、
弱者こそは正しい、美しい、という、妙な観念を振りまいた張本人の
一人ではあります。
太宰が大嫌いだった三島由紀夫などは、
「弱いライオンの方が強いライオンより美しいなどという理屈がどこにあるか」
と言って太宰の美学を痛烈に批判しています。、
そして私も少年時代の当時、それを尤もに思って読みました。
ちなみに三島自身、実は極めて精神的に弱い奴でしたから、
だから近親憎悪的に太宰を毛嫌いしていたのです。
また、その反動でやたら筋肉を鍛えていましたが、
でも結局は強くはなれませんでしたし、
さりとて今更自分の弱さを認める事ができずに、
自爆し果てました。
だから結局は三島も太宰に取り殺された一人と言えます。
また、私が太宰ではなく三島に同感したのも、
自分がさっぱり強くない、甚だ弱い奴だから、
その自己正当化の根拠を三島の方に求めていたものです。
尤も私は、恥さらしにもおめおめといまだに生きています(自爆)。