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2002年04月13日(土) 内語の世界−Web日記というもの−

エンピツ日記には、都合31の様々なジャンル(ノンジャンルを除く)があって、
それぞれに多数の書き手がいます。
私が属するこの「時事/社会」には130人余りが掲載されており、
これは少ない方から9番目の人数です。
一番多いのは「日常/生活」で、ここには7000人以上が参加されています。
以下、多い方から「恋愛」「苦悩/心」と続きます。
日記には本来、自身の日常生活での出来事や想いを記述するものですから、
そういう意味では、この「時事/社会」ジャンルのようなものは、
日記の形式を借りた雑文、コラムの類いであって、
日記の王道と言うか、常道はこちらの方なのでしょう。

しかし考えて見れば、Web日記というのは奇妙なものです.。
一般に、日記は秘密を建て前とします。
単に無味乾燥的な出来事を羅列する場合もありますが、
概ね、普段他人には明かせない自分の一面をそこに表すわけです。
それは赤裸々な自己像であったり、或いは内面的な告白であったりもします。
人間、誰しも綺麗事だけでは生きていけません、表もあれば裏もあります、
何処かでそうした溜まった想いを吐き出さなければ精神的にもちません。
したがって、これは言わば精神的な排泄行為でもあるでしょう。
日記は、そういう役割も果たしているわけです。

ところがWeb日記には、ネットの向こう側に世界中の無数の読み手がいます。
というより、むしろ読まれる事をあてにして書くのがWeb日記です。
本来、秘密であるべき日記が他人の目に触れる事を前提に書かれるのには、
矛盾があります。

現実世界では他人に言えない事が、比較的容易に言えてしまうのは、
言うまでもなく、ネットの匿名性によるものです。
いくら多数の人間がいようとも、彼らは誰も自分を知らない、
つまり現実の利害関係がないから、生の自分を晒す事にもあまり躊躇しません。
そうした気安さがネット上で語る事を可能ならしめています。
しかし、言いやすい事と、言って通るかどうかはまた別の問題です。

Web日記の執筆者が、ネッ上で自己の在り様を語るのは、
それに対する共感や賛同を求めているからでしょう。
とりあえず表明して、判断は読み手に任せているのではないし、
ましてその是非を仰いでいるのではありません。
他者からの自己への肯定、承認の欲求を充たすのが目的です。
しかしネットの向こうにいるのは、必ずしも自分の理解者ばかりとは限りません。
むしろ、それを現実世界で言ったら反発を食らうような類いの本音であれば、
ネット世界でも同様のリアクションがあって不思議ではありません。
したがってそのために生じる、ネット上でのトラブルも少なくありません。

こうした時に、書き手の側からよく聞こえてくる言葉に、
「不快ならば見なければいい」という考えがあります。
確かに、読み手には取捨選択の自由はあります。
気に入らないのものは見なければいいし、ネットであえて不快になる事もありません。
しかし何を見るか見ないかを決めるのは、あくまでその人の判断でしょう。
他人が強制する筋合いのものとも思われません。
また、書き手の側にその権利があるとする根拠のひとつに
個人サイトは私的スペースであるが如き意識がありますが、
しかし、これはどうでしょうか。
誰の目にも触れ得る、共有の場所で私的な事を書いているのです。

ネットは一種の心の中のつぶやき、「内語」の世界だと思います。
現実世界で、心の中で思っている事がそのまま声になって表に出てしまったら
この世の中はとてもじゃないが成り立っていきません.。
ところがネットとは、そのような声が聞こえる世界です。
そして誰の声かわからなくても、それは時に不快なものであり得ます。
ネット・コミュニケーションの難しさがここにあると思います。
しょせん単に内語に過ぎないからです。
人が心の中でどう思うかまでを、誰も規制する事はできません。



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