役人や政治家の常套句で「前向きに検討」というのがあります。
本音は「やらない」という事ですが、あからさまにそう言ってしまうとまずいので
「検討します」「検討中です」と言って誤魔化します。
つまり永遠に検討中で、実行しないのです。
常日頃政治家の言葉の曖昧さを非難している新聞も、
これと似たような言い回しを使う事があります。
有事法制の3法案が閣議決定されたのを受けて
今朝の朝日新聞朝刊には、なかなか香ばしい記事が載っています。
まず1面の「解説」、そして「社説」、
さらに例の「天声人語」でもこの問題を取り上げていますが、
有事に備える法整備の必要性は一応認めた上で、しかしその問題点を次々に並べ、
最後にそれぞれ次のように結んでいます。
「国民の多くが納得できるまで説明を尽くすことが首相の責務である」(「解説」)
「国民が納得するまで丁寧な議論をすべきである」(「社説」)
「国民の声をじっくり聴いた上でことを進めてほしい」(「天声人語」)
一見すると、もっともな言い分のように聞こえますが、
その本音は要するに「有事法制反対」という事でしょう。
朝日が、有事法制の必要性を認めた上で、
なおかつそんなに国民的議論が重要だと思っているなら、
朝日が考えるベターな対案でも提示して、紙上で論議を喚起したらよさそうなものですが、
今までそんな事は一度もありません。
むしろ「右傾化」「タカ派」のような、時代錯誤なおどろおどろしい言葉を使って、
何とか阻止しようと、後ろ向きな事ばかりやっていたのが実情です。
しかし近年、テロ事件や不審船問題の発生で
日本の危機管理のあり方が問題視されている世論の動向の中では、
大衆迎合新聞としてはさすがに有事法整備そのものを反対とは言いにくくなったので、
ネガティブな面ばかり強調して難癖をつけて、
結果として結論を引き延ばしてうやむやにしたいのです。
そのためのキーワードが「じっくり議論を尽くす」という言い回しです。
これは政治家の「前向きに検討」=「永久に検討中で、つまりやらない」と同じで、
「じっくり議論」=「永久に議論、つまりやらない」という事です。
何ともまわりくどい姑息なやり方で、読売の社説が
[有事関連法案]「これを足場に幅広い備え急げ」と、
その主張のいい悪いは別にして、はっきり姿勢を打ち出しているのとは対照的です。
朝日自身の本音は、中国や韓国の表明する「懸念」「警戒感」、
或いは明日あたりから読者投稿=「声」の欄で読者の口を借りて言わせるのでしょうが、
大新聞を自認するなら、正々堂々自説を展開してもらいたいものです。